論文レビュー

アクセラレーター支援で恵まれたスタートアップがさらに成長するメカニズム

新興企業の創業エコシステムが、アクセラレーターでの成果をどう左右するかを分析。良い「池」出身のスタートアップがさらに成長する累積優位のメカニズムを示す。

2026.04.01 約3分で読めます

論文紹介Fehder (2024) · Administrative Science Quarterly 論文を読む →

アクセラレーターの支援を通じて、恵まれたスタートアップがさらに成長するメカニズム (Fehder, 2024)

前提

一般的に、資金や人脈が不足するスタートアップを支援し、地域の起業エコシステムを活性化すると期待されるのがアクセラレーター

しかし、実態は逆説的で、ほとんどのアクセラレーターは、資源が豊かな場所に集中

そこで、スタートアップのリソース不足を解消するという期待に応えているのかどうか明らかにするため、🇺🇸ボストンのアクセラレーターの最終選考候補(セミファイナリスト以上)に残った1,150社のスタートアップを分析

→ 採択スコア「ギリギリ合格したスタートアップ」と「ギリギリ不合格だったスタートアップ」のその後を比較

研究仮説1:アクセラレーターの効果

アクセラレーターに参加すること自体に効果はあるのか?

結果:YES

プログラムに参加したスタートアップは、僅差で落選した企業に比べ、
・大規模な資金調達を達成する確率が 24.5% ポイント上昇
・大規模な雇用を達成する確率が 30.9% ポイント上昇

研究仮説2: ホームバイアス

では、その効果は誰にでも同じか?「地元のスタートアップ」の方がより得をするのか?

結果:YES

アクセラレーターと同じボストン出身のスタートアップは、遠方から来たスタートアップよりも、プログラム参加による効果が有意に大きい傾向

研究仮説3, 4:出身地の豊かさ

スタートアップが元々いた創業地のVCやネットワークの多さは、アクセラレーターの効果に影響するのか?

結果:YES

創業地がVCやネットワーキングイベントに恵まれていたスタートアップほど、アクセラレーター参加による成長効果がより大きくなる

→ これは「資源の乏しいスタートアップの成長を支援する」というより「元々恵まれたスタートアップをさらに加速させる」効果

研究仮説5:地元の中での格差

同じ地元(今回はボストン)の中でも、VCなどが集まる中心地(例:ケンドール・スクエア)出身の企業は、郊外のスタートアップより得をするのか?

結果:一概には言えない(資源の種類により異なる)

地元の中でも、ネットワーキングイベントが盛んな場所の出身であるほど、アクセラレーターによる成長効果は大きくなる傾向

しかし、VCへの近接性については、異なる結果に

-> 資金調達面において、地元のスタートアップの場合、元々VCに近いほどアクセラレーター参加による追加的な効果はむしろ小さくなった。 一方、雇用を増やす面での効果は大きくなった

※この理由について原文では、地元のスタートアップはアクセラレーターを介さずともVCと接点が既にあるため、アクセラ参加による追加的効果が限定的になる可能性を指摘

背景にあるメカニズム

アクセラレーターは、直接的に資源を「与える」だけではない

スタートアップが特定地域の関係者にアクセスし、そこから資源を引き出す「触媒」としても機能

よって、元々豊かな環境にいたスタートアップは、アクセラレーターを介して、既存のネットワークや資源をより効率的に活用できるため、効果が最大化される

まとめ

アクセラレーターは資源の乏しいスタートアップを支える役割もあるが、それ以上にリソースが豊富なスタートアップの成長を加速化させる

同じ地域であっても、より豊かなエリア出身のスタートアップ成長を後押しすることから、意図せずして地域の起業格差を拡大させている可能性を示唆

論文はこちら👇
Fehder, D. C. (2024). Coming from a Good Pond: The Influence of a New Venture’s Founding Ecosystem on Accelerator Performance. Administrative Science Quarterly, 69(1), 1-38. https://doi.org/10.1177/00018392231204839

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