論文レビュー

環境配慮を重視するスタートアップは出資機会で有利か不利か

リソースの乏しいスタートアップにとって環境配慮は「利益に直結しない活動」とも見なされうる。グリーン施策がエンジェル投資家の正当性評価と資金提供をどう左右するかを検証する。

2026.04.06 約3分で読めます

論文紹介Truong & Nagy (2021) · Small Business Economics 論文を読む →

前提

大企業は本業だけでなくCSR(企業の社会的責任)も重要視されるが、リソースの乏しいスタートアップでは「利益に直結しない活動」と見なされる可能性がある

では、利益追求を主目的とするスタートアップが、事業の一環として環境に配慮した場合、投資家からはどのように認識されるのか?

実験1:グリーンな取り組みへの評価

154人のエンジェル投資家を対象に、事業内容は全く同じで「グリーンな取り組みの有無」だけが異なる事業計画書を提示し、投資意欲を比較

🌿グリーンな取り組みの例:
「事業で使う電力は、コストはかかるがソーラーパネルで賄う」

発見1:グリーンな取り組みは「正当性」を高め、投資意欲が向上

グリーンな取り組みがある方が、投資家からの評価は高い

✅️メカニズムは「正統性(Legitimacy)」

「環境に配慮するスタートアップ」
→「社会的に望ましい、真っ当な企業(正統性が高い)」
→「投資したい」

という心理がはたらいている可能性

実験2:事業環境を操作

「事業環境の不確実性(Environmental Dynamism)」という条件を追加し、146名のエンジェル投資が事業を評価

-> 変化の激しい市場と安定した市場で、グリーンな取り組みの効果がどう変わるか検証

発見2:効果があるのは「安定した市場」のみ

グリーンな取り組みが投資家の評価を高める効果は、不安定な市場よりも安定した市場において、より強く見られた

✅不安定な市場では、投資家は「そんな余裕があるなら、本業の危機管理に集中すべき」と考え、グリーンな取り組みを評価しないことを示唆

メカニズムの考察

なぜ市場の安定性が重要なのか?
-> 不安定な市場では、投資家は企業の生存を最優先する

よって、利益に直結しない活動は「リソースの無駄遣い」と見なされやすい

一方、安定した市場では、投資家はより長期的な視点を持つ

-> スタートアップの「評判」や「社会的価値」といった無形の資産も評価対象となり、グリーンな取り組みが「賢明な投資」と映る

起業家への示唆

✅自社の「グリーンな取り組み」をアピールする際は、それが単なるコストではなく、長期的な「正統性」や「評判」を高める戦略的投資であることを、説得力をもって語る必要がある

✅そのアピールが響くかどうかは、事業を取り巻く市場環境の安定性にも左右される

まとめ

スタートアップのグリーンな取り組みは、諸刃の剣
市場が安定していれば、スタートアップの「正統性」を高め、投資を呼び込む追い風になる

しかし、市場が不安定な状況では、かえって「脇が甘い」と見なされるリスク

論文はこちら👇
Truong, Y., & Nagy, B. G. (2021). Nascent ventures’ green initiatives and angel investor judgments of legitimacy and funding. Small Business Economics, 57(4), 1801-1818. doi:10.1007/s11187-020-00373-5

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