論文レビュー

イノベーション補助金が生むのは「革新的な企業」か「補助金獲得が上手な企業」か

補助金が革新的なスタートアップを育てるのか、それとも申請に長けた「補助金起業家」を生むだけなのかを検証。政策の意図と実態の乖離を問う。

2026.03.30 約2分で読めます

論文紹介Santoleri & Russo (2025) · Research policy 論文を読む →

イノベーション推進の補助金、生んでいるのは「革新的なスタートアップ?」「補助金獲得が上手なスタートアップ?」(Santoleri & Russo, 2025)

研究背景

世界中で、特に地方自治体レベルでのスタートアップ支援策が乱立する中、個別のプログラム評価はあっても、それらが「全体として」どのような影響を与えているのかは、ほとんど分かっていない

-> 本研究は、地方補助金が活発なイタリアを舞台に、補助金の採択スコアが「僅差で採択されたケース」と「僅差で不採択だったケース」を比較し、補助金の集合的効果を検証

発見1:ほぼゼロの効果

地方の補助金は「イノベーション」「雇用」「売上」「生産性」など、企業のパフォーマンスを示すほとんどの指標に対して統計的に有意な影響を与えず

唯一の例外は、採択翌年の倒産確率を短期的に下げる効果

-> つまり、効果はほぼゼロに近い

発見2:例外的な効果が一つ

本来の想定とは異なる明確な効果が1つだけあり、それは「一度地方の補助金をもらうと、次の地方の補助金をもらえる確率が有意に高まる」というもの

-> 一種の「悪質なマタイ効果」を示唆(マタイ効果:持てる者はさらに与えられる)

一度補助金を得ることで・・・

✅ 評判:
「あの会社は補助金をもらえたから有望だろう」という評判がつく

✅ 学習:
申請書の書き方など、補助金獲得のノウハウを学習する

これにより、次の補助金も獲得しやすくなる

発見3:スキルは「ローカル限定」

ローカル地域で獲得した「補助金獲得スキル」は、同じ地方レベルでの他の補助金には有効だが、国やEUレベルの補助金には通用しない

-> 国やEUレベルの、より競争が激しく審査基準が異なる補助金の獲得確率を高める効果はなかった

まとめ:この研究が意味すること

地方の補助金制度が、市場で成功する革新的なスタートアップではなく、地方の補助金システムを攻略することに長けた「補助金起業家 (subsidy entrepreneurs)」を生み出している可能性

政策担当者は、補助金の「数」や「採択率」だけでなく、その後の市場でのパフォーマンスを厳しく評価する必要を示唆

地方のスタートアップ補助金は、意図せず「補助金起業家」という特殊なプレイヤーを育て、リソースの非効率な配分を生んでいるのかもしれない

論文はこちら👇
Santoleri, P., & Russo, E. (2025). Spurring subsidy entrepreneurs. Research policy, 54(1). doi:10.1016/j.respol.2024.105128

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