朝型・夜型といった投資家の体内時計は、スタートアップ投資の質を左右するか
投資家の概日リズム(朝型/夜型)が、アーリーステージの投資判断の質にどう影響するかを検証。意思決定における生体リズムの役割を明らかにする。
2026.07.06 約3分で読めます
朝型 / 夜型といった投資家の体内時計は、スタートアップ投資の質を左右するか?Guarana et al. (2022)
研究の前提と仮説
本研究は、人間の24時間周期の生理的リズムである「サーカディアン・プロセス(概日リズム)」に着目
-> 個人の認知能力(注意力、警戒心など)はこのリズムに沿って変動
-> 朝にピークが来る「朝型(Lark)」と、夜にピークが来る「夜型(Owl)」に分かれる
-> 朝型人間の投資家は朝に、夜型人間なら夜に、それぞれ最も良い判断ができるはず
研究手法
🔬研究1: ECF(株式投資型クラウドファンディング)投資家82名を対象としたフィールド実験
-> ランダムに、朝(7-9時)か夜(22-24時)のセッションに参加者を割り当て、質の低い投資案件への投資額を比較
🔬研究2&3:
学生や経験豊富なECF投資家を対象とした実験で、メカニズムと頑健性を検証
どうやって「判断の質」を測ったのか?
研究チームは、「市場がない」「ビジネスモデルが破綻している」など、冷静に分析すれば「投資すべきではない」とすぐわかる投資案件を作成
-> 「質の低い案件」への投資額が多ければ多いほど、その投資家は質の低い判断を下したとみなす
📝発見1:体内時計とのズレが、悪い投資判断を招く
🔹夜型(Owl)の投資家は、朝の時間帯において質の低い投資案件に投資する額が多い
🔹朝型(Lark)の投資家は、夜の時間帯において質の低い投資案件に投資する額が多い
-> 体内時計と意思決定の時間帯がズレていると、投資家の判断能力は低下する傾向
📝発見2:メカニズムは「情報探索努力」
意思決定の質が変化する理由は、投資判断の前にどれだけ詳細情報を閲覧したかと関連
-> 体内時計と投資判断の時間帯が一致している投資家ほど、より多くの情報を探索
つまり:
「体内時計と時間帯の一致」
→「情報探索に費やす時間が増加」
→「より質の高い投資判断」という因果
📝発見3:質の高い案件を見抜く力も向上
体内時計と時間帯が一致している投資家は、質の低い案件に対して冷静な判断を下すだけでなく、質の高い案件により多く投資する傾向も見られた
-> この効果は、投資家の過去の投資経験の有無にかかわらず存在
まとめ
投資判断という高度な認知タスクは、体内時計という人間の根源的な生理的プロセスに影響されることを提示
投資判断が「いつ」行われるかによって判断の質は変わり、その変化も投資家が朝型なのか夜型なのかによって変わる
投資家視点での実践的含意:
自らの「認知能力のゴールデンタイム」を把握してそのタイミングを活用することが、より良い判断につながる
起業家視点での実践的含意:
投資家の体内時計に合わせたピッチ実施で、より正確な事業評価を得られる可能性
Rererence: Guarana, C. L., Stevenson, R. M., Gish, J. J., Ryu, J. W. (June), & Crawley, R. (2022). Owls, larks, or investment sharks? The role of circadian process in early-stage investment decisions. Journal of Business Venturing, 37(1), 106165. DOI: 10.1016/j.jbusvent.2021.106165
