論文レビュー

投資家へのピッチで、起業家は弱みを見せるべきか

起業家が個人的な欠点を開示することに、投資家がどう反応するかを検証。弱みの開示が信頼を生む場合と逆効果になる場合の境界を明らかにする。

2026.07.15 約3分で読めます

論文紹介Howe & Menges (2025) · Organizational Behavior and Human Decision Processes 論文を読む →

投資家へのピッチで、起業家は弱みを見せるべきか?Howe & Menges (2024)

前提

「ありのままの自分を見せる」ことは時に重要であるとされるが、起業の現場で弱みを見せることが良いかどうかは議論がある

この研究では起業家個人の「弱み (flaw)」を2種類に分類。

🔹エージェンシー過剰型 (Agency-excess):
傲慢、支配的、懐疑的など、自己主張が強すぎる弱み。他者より優位に立とうとする印象を与える

🔹エージェンシー欠如型 (Agency-deficit):
不安、無秩序、騙されやすいなど、自己主張が弱すぎる弱み。他者より劣位にある印象を与える

研究手法:2つのアプローチで検証

1. フィールド調査
クラウドファンディングサイト「Kickstarter」に掲載された、米国🇺🇸の起業家による2,000件のピッチ内容を分析

-> 実際にどのような「弱み」が開示されており、それが資金調達額や支援者数にどう影響しているかを調査

2. オンライン実験
投資に関心のある人々や一般の実験参加者が対象

参加者に架空のスタートアップへの投資を判断してもらう投資ゲームを実施

あわせて、参加者自身が「自分は自信がないタイプか、傲慢なタイプか」などを自己評価

📝発見1

自己主張が弱すぎる「欠如型」の弱みを開示した起業家は、開示しなかった起業家より多くの資金と支援者を集める。

一方で自己主張が強すぎる「過剰型」の弱み開示は効果なし

📝発見2

「欠如型」の弱み開示は、投資家との心理的な近さ(近接性)を高め、投資を促す可能性

しかし、その効果は投資家自身も同じ弱みを持っている場合に限られる

🔹自己主張が不足している投資家は、同様の起業家に親近感を覚え、投資に前向きになる可能性

🔹似ていない投資家(自己主張が過剰な投資家)には、弱みの開示はむしろマイナスに働くことも

📝発見3

自己主張が強すぎる「過剰型」の弱みを開示しても、投資家との心理的近接性は高まらず、投資も増えない

この結果は、投資家が同じように「過剰型」であっても同じ

-> 支配的な態度は、どちらのタイプの投資家に対しても効果がない

まとめ

効果のある弱みの見せ方 vs 逆効果の見せ方:

✅ 「不安なので助けてほしい」といった支援を求める起業家
→ 似た境遇の投資家からは共感を呼ぶ可能性

❌ 「私以外に成功はあり得ない」といった他者を軽んじる起業家
→ 投資家から共感されにくい

Reference: Howe, L. C., & Menges, J. I. (2025). Pitch imperfect: How investors respond to entrepreneur disclosure of personal flaws. Organizational Behavior and Human Decision Processes, 186, 104388. DOI: 10.1016/j.obhdp.2024.104388

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