論文レビュー

女性投資家による女性起業家の支援は、常に良い結果となるのか

ジェンダー・ホモフィリーと「無能というスティグマ」の観点から、女性投資家が女性起業家を支援することの効果を検証。同性支援が必ずしも順機能しない構造を示す。

2026.07.13 約3分で読めます

論文紹介Snellman & Solal (2022) · Organization Science 論文を読む →

女性による女性起業家の支援は、常に良い結果となるのか? (Snellman & Solal, 2022)

研究の背景

女性起業家が資金調達で不利な状況にあることへの解決策として、女性に特化したアクセラレーターやネットワーキング機会、女性投資家が女性起業家を支援することなどが推奨されてきた

しかし、女性投資家から支援を受けた女性起業家が、その後の投資機会でどう評価されるのかは不明だった

本研究の仮説

社会心理学の帰属理論である「割引原理」に立脚:
ある結果に対して複数の原因が考えられる場合、人々は個々の原因の重要性を割り引いて考える、という概念

ロジック:
-> 女性起業家が資金調達に成功する

-> 関係者は「なぜこの人は資金調達に成功したのか」を考える

-> 最初の投資家が女性だった場合、女性起業家の能力以外に「女性同士だから支援された」と考える

-> 関係者は起業家の実際の能力を割り引いて評価する

研究手法1

Crunchbaseから、2010年~2018年に米国🇺🇸で初回のVC資金調達 (Seed or Series A) を受けたスタートアップ2,136社 (うち女性創業290社) を分析

-> 初回の投資家の性別が、次の資金調達ラウンド獲得までの期間にどう影響するか?

研究手法2

トップ・スクールのMBA学生134名を対象に、起業家(男性/女性)と初期投資家(男性/女性)の性別をコントロール

-> 全く同じ内容のピッチ動画(2×2の4パターン)を見せ、ピッチの質や起業家の能力を評価

📝発見1

女性投資家のみから支援を受けた女性起業家のスタートアップは、男性投資家から支援を受けた場合に比べ、次の資金調達ラウンドに進む確率が2倍低い

一方、男性創業者のスタートアップにおいては、投資家の性別による影響は見られず

📝発見2

「女性起業家が女性投資家から支援されたシナリオ」においてのみ、ピッチの質と起業家の能力が有意に低く評価される

一方、他の組み合わせ(男性起業家 - 男性投資家、男 - 女、女 - 男)では、評価に差はみられず

メカニズムの解説

女性投資家からの支援
→「その起業家は能力が低い」という認識(割引原理)
→ ピッチにおいて低い評価を受ける

まとめ

ジェンダー・ギャップに対する支援が、意図せぬ結果(能力の不当評価)につながるケースを示唆

-> 評価バイアスによって生まれる能力が低いという社会的差別が、ジェンダー平等の障害である可能性

⚠️注意:
論文の著者は「女性による女性支援を避けよう」と提示しているわけではない

-> 無意識のジェンダー・バイアスが課題であり、どうすればこの課題を乗り越えられるか考えるべきと主張

Reference: Snellman, K., & Solal, I. (2022). Does Investor Gender Matter for the Success of Female Entrepreneurs? Gender Homophily and the Stigma of Incompetence in Entrepreneurial Finance. Organization Science, 34(2), 680-699. DOI: 10.1287/orsc.2022.1594

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