論文レビュー

「好き」を仕事にする人々──見過ごされてきたライフスタイル起業

富や社会価値の追求に偏りがちな起業研究で見過ごされてきた、ライフスタイル志向の起業家に光を当てる文献レビュー。動機・特徴・今後の研究課題を整理する。

2026.03.02 約3分で読めます

論文紹介Ivanycheva et al. (2024) · Journal of Management Studies

研究の背景:見過ごされてきた起業家たち

これまで起業研究の主眼として、富の追求、所得の確保、社会価値の創造などに焦点を当ててきた

しかし、職人、アーティスト、スポーツ愛好家、観光地のカフェ経営者など、全く異なる動機を持つ起業家が数多く存在する

-> これまで諸分野に散逸していた162本の研究を統合し、「ライフスタイル起業(Lifestyle Entrepreneurship)」というフレームワークを提示

<ライフスタイル起業とは?>
起業家自身がやりがいを感じる活動に従事するため、および/または、望む場所に住むために、新しいベンチャーを創造すること

-> 重要なのは、事業が富や所得を得るための手段ではなく、それ自体が目的である点

発見1:ライフスタイル起業の3類型

1. 表現駆動型 (Expression-driven):
芸術、工芸、デザインなどを通じた自己表現や創造性の発揮が目的

2. 活動駆動型 (Activity-driven):
スポーツ、農業、レクリエーションなど、特定の活動への情熱が原動力

3. 場所駆動型 (Location-driven):
観光地や田舎など、特定の場所でのライフスタイルを維持することが目的

発見2:ライフスタイル起業に共通する動機(先行要因)

1. 自律性への強い欲求:
「誰かの下で働きたくない」という思い

2. 情熱:
創造性、特定の活動、あるいは特定の場所への情熱が全ての原点

3. 現在の充足:
将来の富より「今、この活動をすること」を重視。事業は未来のための手段ではなく、現在の目的そのもの

発見3:ライフスタイル起業に共通する行動

1. ワークライフ統合:
仕事と私生活の境界が曖昧。「好きなこと」が仕事なので、分ける必要がない

2. 協調 > 競争:
同じ価値観を持つ仲間との協力を重視する傾向

3. 直感的計画:
綿密な事業計画よりも、直感や価値観に基づいた意思決定を好む

4. ブリコラージュ:
手元にある資源を創造的に組み合わせて課題を解決

発見4:ライフスタイル起業がもたらす成果

個人的成果:
幸福感、満足感、自己成長

社会的成果:
伝統文化の維持・革新、ニッチ市場の創造、コミュニティの活性化、ユーザー・イノベーション

-> 経済的成長は限定的でも、社会文化的価値は大きい

まとめ

✅ ライフスタイル起業(LE)は、富や成長ではなく、活動・場所への情熱を動機とする重要な起業形態

✅ LEは「表現駆動型」「活動駆動型」「場所駆動型」の3つに大別

✅ 彼らの行動はワークライフ統合や協調性を特徴とし、成果は幸福感や文化貢献など多岐にわたる

書誌情報

Ivanycheva, D., Schulze, W. S., Lundmark, E., & Chirico, F. (2024). Lifestyle Entrepreneurship: Literature Review and Future Research Agenda. Journal of Management Studies.

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