STEM起業のジェンダー・ギャップ──医療保険改革(ACA)の視点から
STEM分野の女性起業は男性より低い。米国の医療保険改革(ACA)が、医療保険への依存を弱めることで女性のSTEM起業をどう後押ししたかを分析する。
2026.08.24 約3分で読めます
背景
STEM (科学・技術・工学・数学) 分野の女性起業は男性より4-6%ポイント低く、経済成長の観点からも格差解消は課題
関連して、アメリカ🇺🇸では高額な医療費を雇用主の保険でカバーしているため起業への足枷になるケースがある
-> 2014年の個人保険市場の規制緩和(ACA改革)によって、起業がしやすくなったのか?
それにより、STEM起業でのジェンダー・ギャップは変化したのか?
研究上の仮説
1️⃣ 女性は出産など、男性より保険の必要性が高いため、保険改革による保険料低下やアクセス改善の恩恵が大きい
2️⃣ STEM人材は、医療保険改革によって誕生する複雑な市場を、ビジネスチャンスとして活用できる人的・経済的リソースを持つ
-> データは2011~2018年の米国人口動態調査(CPS)データ、サンプル335,792人(うち女性48%)を利用
保険改革の施行前後で、州ごとの保険市場規制の違い(=改革による影響度の違い)を分析
📝発見1:医療保険改革はSTEM起業の男女格差を縮小
改革後、非STEM分野では男女格差に有意な変化はなかったが、STEM分野で起業する確率は男性と比較して0.4%ポイント上昇
また、STEM分野の賃金労働からSTEM起業への移行は2.7%ポイントの上昇
📝発見2:効果は既婚女性で顕著
保険改革は、既婚女性のSTEM起業が増加
-> 既婚女性の方が(出産等で)医療ニーズが高く、配偶者の保険が魅力的でない場合に自身で個人保険に加入する傾向があるためか
CPSデータによると、年間100万人以上は配偶者に雇用主保険があってもそれとは別に個人保険に加入している
📝発見3:特定の既婚女性にさらに影響
既婚女性の中でも、特に高学歴 / 持ち家あり/ 高世帯収入といった人的 / 経済的資本がある人ほど、医療保険改革によるSTEM起業の促進効果が大きい
📝発見4: 効果は自営業(非法人)で顕著
保険改革によるSTEM女性起業の増加は、非法人形態の自営業で特に見られた。
-> 法人企業は自社で団体保険を提供するため、個人保険市場の変化の影響を受けにくいという一般論と合致
まとめ
医療保険改革のような制度変更が、雇用主提供の福利厚生による労働市場の流動性制約を緩和
-> その結果、STEM分野の女性起業を促進することで男女格差を縮小しうることを示唆
ただし、その効果は既婚女性や非法人形態といった特定の対象で顕著に現れるなど、単純ではない側面がある
Reference: Bao, J. (2024). Gender gap in STEM entrepreneurship: Effects of the Affordable Care Act reform. Strategic Management Journal. doi:10.1002/smj.3594
