チームの男女構成でコミュニケーションとパフォーマンスはどう変わるか
学生1,368人の実験。男女混合チームでは男性が会話を支配し、低スキル男性が高スキル女性より多く発言。性別がスキルを逆転させて発言量を左右し、その経験が将来のチーム選好も変える。
2026.01.21 約4分で読めます
研究の背景
これまで、男女構成が企業の業績に与える影響は議論されてきたが、チーム内での相互作用については不明な状態だった
-> パフォーマンスという結果だけでなく、プロセスであるコミュニケーションに着目
学生1368人を、各チームの能力構成が均等になるよう、中央値より成績が高い学生2名と低い学生2名で構成される4人チームにランダムに分ける:
・男性のみチーム
・女性のみチーム
・男女混合チーム(男女2人ずつ)
チームはオンラインの音声チャットルームで、ビジネスケースに関する共同タスクにとりくむ
実験のポイント
1. タスクはジェンダーニュートラル:
別実験で、このタスクの個人成績に性差はないことを確認済み
2. コミュニケーションが必須:
チーム全員が同じ正解を選ばないと報酬がもらえないルールで、会話を促す
-> パフォーマンスの差は純粋に「コミュニケーションの違い」から生まれることになる
発見1:チーム全体の発言量
チームごとの会話の総量は、男性のみチームが最も多く、次いで男女混合チーム、女性のみチームの順(ただし、男性のみチームと混合チームの差は統計的に有意ではない)
会話の総量では男性のみチームが最も多い傾向にあったが、混合チームとの差は統計的に有意ではなかった
-> しかし、タスク遂行に直結する「タスク関連用語の使用量」においては、男性のみチームが他の構成のチームを有意に上回る
発見2:チーム全体のパフォーマンス
パフォーマンスとコミュニケーション量の関係を探索的に分析した結果、特にタスク関連用語の発言量が多いチームほど、パフォーマンスが高い傾向
-> 男性のみチームが、他のどの構成のチームよりも高いパフォーマンスを記録
タスクに関連する用語を多く使う活発なコミュニケーションが、チームの成果につながる可能性を示唆
※ コミュニケーションの質(発言全体に占めるタスク関連用語の割合)には、チーム構成や性別による有意な差は見られなかった
-> パフォーマンスの差が発言の質ではなく、主にタスク関連の議論の量によって生じている可能性を示唆
発見3:男女混合チームの内実
男女混合チームでは、男性による会話の支配がみられた
男性は女性より約70%も多く発言。個人で見ると、男性は同性だけのチームにいる時より饒舌になり、女性はその逆で寡黙になる、という正反対の反応
女性の発言量の減少は、スキルレベルに関わらず見られた
発見4:混合チームではスキルより性別が発言量を左右する
混合チーム内での発言量が多かった順にした、性別と個人能力の内容:
1. 高スキル男性
2. 低スキル男性
3. 高スキル女性
4. 低スキル女性
-> 低スキルの男性の方が、高スキルの女性よりも多く発言
また、高スキルの男性と低スキルの男性の発言量の間には、統計的に有意な差が見られなかった
-> 男女混合チームでは、個人のスキルレベルに関わらず、時にはその優劣を逆転させて、性別が発言量を左右する強力な要因となることを示唆
発見5:経験が未来の選択を変える
このコミュニケーション体験は、その後の行動にも影響を与えた
・混合チームを経験した女性は、その後のタスクで男性とチームを組むことに消極的になる
・混合チームを経験した男性は、その後のタスクで女性とチームを組むことに積極的になる
-> 男女混合によるタスク実行経験が、非対称な反応を生み出していることを示唆
考察:なぜ発言量に差が生まれるのか?
男女混合チームにおける男女での発言量の差について、論文では既存研究などを基に以下の2つの可能性を考察
✅ 男女間の自信の差:
男性は自己を過大評価し、女性は過小評価する傾向がある
✅ 社会に根付く性別役割意識:
男性が会話への割り込みなど攻撃的なスタイルで会話を支配した可能性も検討されたが、データ上、それを裏付ける証拠はほとんど見つからなかった
-> 発言量の差は、会話の割り込みといった攻撃的なコミュニケーションによる主導権争いの結果ではなく、ジェンダー間の自信の差や、社会的に深く根付いたジェンダー役割に起因する可能性を示唆
なお、音声感情分析では、混合チームの女性はよりネガティブな感情を示す傾向も
まとめ
✅️混合チームでは、スキルレベルの優劣を逆転させてまで性別が発言量を左右し、男性が会話を支配する傾向が見られた。
✅️混合チームを経験した後、男性はそのようなチームでの作業を再度行うことに積極的になる
✅️一方、女性は混合チームを経験した後に、同様の構成チームでタスクに取り組むことへ消極的になる
✅️チームの男女構成は、コミュニケーションのあり方や態度に影響を与え、スキルに基づく貢献が阻害される場合もあることを示唆
論文はこちら:
Hardt, D., Mayer, L., & Rincke, J. (2025). Who Does the Talking Here? The Impact of Gender Composition on Team Interactions. Management Science, 71(5), 4131-4152.
