音楽フェスやマラソンはどうビジネスになるか──イベント型起業の創業とスケール
イベント型起業を「体験のプラットフォーム」と捉える。鶏と卵問題を解く鍵は、未来を語る物語で「熱狂(Hype)」を生みステークホルダーの同時コミットメントを得ること。
2025.12.24 約4分で読めます
音楽フェスやマラソン大会は、どうやってビジネスになるのか?
研究の背景:なぜ「イベント型起業」は特別なのか?
本論文は、イベント型起業を次のように定義:
『多様なステークホルダーのために価値を創造し、オーディエンスと参加者に時間的制約のある体験を提供することに焦点を当てた、起業活動の創業とスケール』
-> これは、従来の製品・サービス型起業とは根本的に異なる3つの特徴を持つ
(1) 提供価値は「体験」:
モノではなく、その時限りの個人的な体験が価値の中心
(2) 時間的制約:
イベントは特定の期間で完結し、在庫は消滅する
(3) 多様なステークホルダー:
参加者、観客、スポンサー、メディアなど、多くの関係者のコミットメントが不可欠
キーコンセプト解説:イベントはプラットフォーム
本研究の重要な捉え方の一つは、イベントを「プラットフォーム」と見なす点
-> イベント主催者は、単に体験を提供するだけでなく、多様なステークホルダーが出会い、相互に価値を生み出す「場」を創造している
イベント型起業の「鶏と卵問題」
このプラットフォームモデルは、深刻な「鶏と卵問題」を生む
- スポンサーは、観客がいなければ集まらない
- しかし観客は、魅力的な参加者(アーティストや選手)がいなければ集まらない
- 同様に、魅力的な参加者は、十分な観客やメディアの露出がなければ参加しない
…まだ一度も開催されていないイベントに、どうやって彼らを同時に巻き込むのか??
発見1:創業の鍵は「Hype(熱狂)」の創出
この難問を解決する鍵は、イベント開催前に「Hype(ハイプ)」を生み出すこと
ハイプとは「起こりうる未来に対する、集団的なビジョンと約束」であり、人々の注目、興奮、期待を高める力を持つ
-> ステークホルダーの同時コミットメントを促すのだ。
発見2:Hypeを生み出す「未来を語る物語」
では、どうやってHypeを生み出すのか?そのための強力なツールが「Projective Narrative(未来を語る物語)」
これは、まだ存在しないイベントの未来を、あたかも現実であるかのように魅力的に語るストーリー
-> 物語がHypeを生む上で、特に2つの要素が重要
(1) Coherence(一貫性):
物語が魅力的で筋が通っているか(例:有名人の参加)
(2)Fidelity(信頼性):
物語が信じるに足るか(例:実績ある創業者チーム)
創業のロジックまとめ
イベント型起業の創業プロセスは、以下の連鎖で説明できる
魅力的な物語 (Narrative)
→ 熱狂 (Hype)
→ ステークホルダーの同時コミットメント (Synchronized Commitment)
→ 初回イベントの成功
発見3:事業をスケールさせる2つの力
初回イベントが成功した後、どうやって事業を成長・継続(スケール)させるのか?論文は2つの重要な推進力を挙げる
(1) 初回イベントが生んだHype:
成功した初回の熱狂、SNSでの口コミ、メディア報道そのものが、次回の強力なマーケティング資産に
(2) 共同体意識 (Collective Identity):
優れたイベントは、参加者間に「我々は仲間だ」という共同体意識を生む
-> このアイデンティティが、リピート参加や新規参加を促す強力な引力と
スケールのロジックまとめ
イベント型事業のスケールプロセスは、以下の連鎖で説明できる:
初回イベントの成功
→ 初回が生んだHype + 共同体意識の醸成
→ ステークホルダーの継続的コミットメント
→ 事業のスケール
まとめ
✅ イベント型起業は、時間的制約のある「体験」を「プラットフォーム」として提供する独特な事業形態
✅ 創業成功の鍵は、魅力的な物語を通じてHypeを創出し、多様なステークホルダーの「同時コミットメント」を得ること
✅ 事業スケールの鍵は、初回の成功が生み出すHypeと、共同体意識の醸成にある
書誌情報
Fisher, G., Josefy, M. A., & Neubert, E. (2024). Event-based entrepreneurship. Journal of Business Venturing, 39(1), 106366.
