論文レビュー

生まれ順は起業家の行動戦略をどう変えるか──長子は孤軍奮闘、弟妹は助けを求める

生まれ順が起業家のネットワーキング行動と、障害に直面したときの行動を左右する。長子は単独で動き、後から生まれた子は他者に助けを求める傾向を実証する。

2026.03.16 約3分で読めます

論文紹介Kensbock (2025) · Journal of Business Venturing

<研究背景>
生まれ順と「性格」の関連について、過去の究結果を踏まえると、一貫した関連性は確立されていない

そこで本研究は、焦点を「性格」から「行動」へと転換

問い:生まれ順の影響は、恒常的な性格としてではなく、起業家が不確実性や脅威に直面した際に示す「社会的な反応 (social responses)」や「支配的な行動傾向 (predominant behavioral tendencies)」の違いとして現れるのではないか

<研究手法>
起業の各段階にいる起業家を対象に、3つの独立した研究を実施

研究1: 新米起業家 (N=525)
研究2: 活動中の起業家 (N=439)
研究3: 事業を継続 / 確立している起業家 (N=152)

生まれ順が、障害に直面した際の行動にどう影響するかを、複数のサンプルで検証

<理論的背景: なぜ生まれ順が関係する?>
第一子:
親の期待を一身に受け、達成志向が強いとされる。自力で物事を成し遂げようとする「個人的防衛戦略」(脅威に一人で立ち向かうスタイル)を取りがち

後生まれ:
親の関心を引くために競争し、家族の外に支援を求めるとされる。社交的で、他者に頼る「社会的防衛戦略」(社会的なつながりで脅威に対処するスタイル)を学びやすい

<重要なポイント: 「脅威」への反応>
幼少期に形成された行動パターンは、特に「脅威(=起業における障害)」に直面したときに顕著に現れると予測される

-> 困難な状況に陥ったとき、人は最も慣れ親しんだ行動(クセ)に頼りがちになる

発見1: 新米起業家の場合 (研究1)

起業準備段階にある人々(N=525)を分析:

第一子は後生まれに比べ、ネットワーキングの頻度が低い傾向

-> ネットワーキングの頻度の低さが、起業に向けた具体的な行動(事業計画作成など)が少なくなる一因となっていることを示唆

発見2: 活動中の起業家の場合 (研究2)

活動中の起業家(N=439)を調査:
生まれ順によるネットワーキング行動の差は、「障害が深刻なとき」にのみ顕著

-> 深刻な障害に直面すると、後生まれはネットワーキングを活発化させるのに対し、第一子はネットワーク活用を強めず、現状維持、あるいは一人で対処しようとする傾向

発見3: どんな助けを求める? (研究3)

事業を確立した起業家(N=152)を対象に、求めるサポートの種類を調査

障害に直面した際、後生まれは特に「感情的なサポート(共感や理解)」をネットワークに求める傾向が強い

一方で、第一子と後生まれの間で「道具的サポート(アドバイスや支援)」を求める行動には、統計的に有意な差は見られず

-> 論文ではこの理由について「事業を確立した起業家にとっては、道具的サポートの要請はごく自然な業務の一部と見なされているためではないか」と考察

<まとめ>
生まれ順は、起業家が困難を乗り越える際の「社会的反応」に影響を与える

後生まれは、特に深刻な障害に直面した際にネットワークを積極的に活用するという、起業において適応的な行動を取る傾向

対照的に、第一子は「孤軍奮闘 (Go it alone)」する傾向があり、これが起業活動を制限する可能性を示唆

論文はこちら📖
Kensbock, J. M. (2025). Reaching out or going it alone? How birth order shapes networking behavior and entrepreneurial action in the face of obstacles. Journal of Business Venturing, 40(2).

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