女性起業家が資金調達で苦労する理由は投資家の政治思想か
エンジェル投資家の政治的イデオロギーが、女性所有ベンチャーへの投資判断にどう影響するかを分析。資金調達のジェンダーギャップの一因を探る。
2026.06.15 約3分で読めます
研究の背景
起業におけるジェンダーギャップは深刻な問題
-> 女性起業家は男性より63%も資金調達の機会が少ないというデータも(Guzman and Kacperczyk, 2019)
本研究は、投資家の価値観や信念と関連する「政治思想」が焦点
調査方法
米国🇺🇸のエンジェル投資家172人(うち女性4.65%)の10年間(2010-2019)にわたる投資データ7,141件を分析
投資家の政治献金の記録から、個々の投資家が「保守的(Conservative)」か「リベラル(Liberal)」かを政治思想スコアとして数値化。実際の投資行動との関係を検証
発見1:保守的な投資家は、あまり女性起業家に投資しない
政治的に保守的なエンジェル投資家ほど、自身の投資ポートフォリオに占める女性経営のベンチャーの割合が有意に低い
リベラルな投資家の方が、女性起業家に対してより多くの資金を投下
発見2:保守的な投資家が例外的に女性に投資する条件
保守的な投資家が女性起業家に投資する際の特徴2つ
1️⃣ 男性の共同創業者が多い
保守的な投資家は、女性起業家の企業に投資する場合でも、男性の共同創業者の比率が高いチームを好む傾向
-> 「起業は男性的であるべき」という伝統的なジェンダー役割意識、男性の存在がその企業の「正当性」を補強するといった無意識の判断がある可能性
2️⃣ 「女性らしい」業界で事業を行っている
保守的な投資家は、小売やサービス業など女性が支配的な業界で事業を行う女性起業家を好む傾向
「女性はこの分野が得意だろう」というステレオタイプに合致する(=ジェンダー役割と一致)ベンチャーの方が、保守的な投資家が安心して投資することを示唆
メカニズムの考察
リベラルな人々は「平等」を重視し、社会的不平等を是正しようとする
-> 不利な立場に置かれがちな女性起業家を積極的に支援
一方、保守的な人々は「伝統」や「秩序」を重んじ、既存の社会構造(男性優位)を自然なものとして受け入れがち
-> 現状を変えようという動機は働きにくい
まとめ
起業におけるジェンダーギャップの根源には、投資家の政治思想が関連していることを示唆
->「不利な立場にある女性を支援しよう」という呼びかけだけでは不十分な可能性
投資家が持つバイアスに影響されない、客観的な評価基準が必要か
女性起業家にとっての示唆:
投資家を探す際、過去の投資歴だけでなく、SNSや公的発言から政治的スタンスを推測することも有効な戦略に
Reference: Chen, J., Sohl, J. E., & Lien, W.-C. (2023). Angel Investors’ Political Ideology and Investments in Women-Owned Ventures. Journal of Business Ethics, 188(2), 379-396. doi:10.1007/s10551-022-05302-y
