論文レビュー

イノベーションはご近所付き合いから生まれる?──都市間の知識スピルオーバー

知識スピルオーバーは経済成長の原動力。都市間の社会的・地理的・技術的なつながりが、イノベーションの伝播をどう促すかを大規模データで分析する。

2026.06.17 約3分で読めます

論文紹介Obschonka et al. (2023) · Research Policy 論文を読む →

前提

企業や地域の知識が、他の主体に漏れ伝わり新たなイノベーションを生む「知識スピルオーバー」は、経済成長の原動力

では、その知識は一体「どのように」都市から都市へと伝わり、イノベーションとして結実するのか?

本研究は、都市間の「つながり (Connectedness)」が知識スピルオーバーを媒介すると仮定

-> つながりを3タイプに分類
1️⃣ 地理的つながり: 物理的な距離の近さ
2️⃣ 技術的つながり: 特許分野など、技術的な類似性
3️⃣ 社会的つながり: Facebookの友人関係など、バーチャルな人的ネットワーク

さらに、単につながっているだけでなく、知識を受け取る側である地域住民の「心理的開放性 (Psychological Openness)」にも着目

-> 新しいアイデアや経験に対して、地域の人たちが寛容かどうか

研究手法

米国🇺🇸360の都市を対象に、イノベーション(特許出願数)、つながり(都市間の距離、特許分野の類似性、Facebookの友人関係データ)、心理的開放性を分析

発見1:地理的 / 社会的つながりが重要

🔹地理的つながり:
イノベーティブな都市から地理的に近いと知識スピルオーバーにより、該当都市の特許数が有意に増加

🔹社会的つながり:
Facebookの友人関係で強く結ばれた都市からのスピルオーバーも、特許数を有意に増加

🔹技術的つながり:
技術分野が似ているだけでは、有意な効果は見られず

発見2:心理的開放性が触媒に

都市住民の「心理的開放性」は、社会的つながりによる知識スピルオーバーの効果を有意に増強

開放性の高い都市は、SNSなどを通じて流入する新しい知識をより効果的に吸収し、イノベーションに結びつけている可能性

メカニズムの解説

社会的つながりが1標準偏差増加した際、開放性が高い都市では特許数が100増加

一方、低い都市ではほとんど効果が見られず

開放的な文化によって、バーチャルなつながりもイノベーションの苗床に

まとめ

🔹物理的な近さはインベーションにおいて依然として重要
🔹Facebookの友人関係のような「バーチャルな人的つながり」もイノベーションに寄与
🔹都市住民の心理的開放性が高いことで、つながりの効果はブーストされる

Reference: Obschonka, M., Tavassoli, S., Rentfrow, P. J., Potter, J., & Gosling, S. D. (2023). Innovation and inter-city knowledge spillovers: Social, geographical, and technological connectedness and psychological openness. Research Policy, 52(8), 104849. DOI: 10.1016/j.respol.2023.104849

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