論文レビュー

チームの女性が増えれば、女性への偏見(差別ペナルティ)は減るのか

チームのジェンダー構成とリーダーシップが、女性の影響力にどう作用するかを検証。「数の力」で女性への偏見が和らぐのかを実証的に明らかにする。

2026.08.05 約3分で読めます

論文紹介Karpowitz et al. (2024) · Journal of Political Economy 論文を読む →

チームの女性が増えれば、女性に対する偏見(差別ペナルティ)は減るのか?Karpowitz et al. (2024)

前提

ビジネススクールなどアメリカの学生(522人 + 1,308人)を対象に分析

ランダムに男女混合チーム(女性が少数派 vs 女性が多数派)に分け、数ヶ月間にわたる共同作業を実施

-> チーム内での「誰が最も影響力があったか」「誰を代表者に選ぶか」といった投票データを分析し、女性の影響力を測定

発見1:数の力は実在

🔴女性が少数派のチーム
女性は過小評価され、影響力を持つと見なされにくい。代表者にも選ばれにくい

🟢女性が多数派のチーム
男女間の影響力格差は大幅に縮小

-> これは女性特有の現象で、男性が少数派になっても同様の不利益は見られず

発見2:女性リーダーの効果

共同作業の途中でリーダー(男性or女性)をランダムに任命した結果:

-> 女性リーダーが任命されたチームでは、女性が少数派であっても、その影響力は劇的に向上

-> 女性比率を変えなくても、リーダーという制度的存在を変えるだけで、女性の発言力は大きく改善

発見3:差別の定量化

さらに、投票モデルを使って「差別のペナルティ」を数値化

-> 女性がチームメイトから影響力のある人物として「1票」得るためには、男性よりもどれだけ優れている必要があるか?

1️⃣ 女性少数派チーム:
最も優秀な男性を「0.67標準偏差」上回る必要がある

-> 男性と同等に優秀なだけでは、リーダーに選ばれない(女性に対する差別ペナルティの存在)

2️⃣ 女性多数派チーム:
上記の差別ペナルティが「0.25標準偏差」に半減

→ 女性の数が増えると差別効果が約50%減る

3️⃣ 女性リーダーチーム:
女性多数派チームと同様にこのペナルティはおよそ0.7→0.3標準偏差へと、女性比率を高めるのと同等レベルまで減少

->「女性を増やす」ことと「女性をリーダーにする」ことは、女性に対する差別ペナルティを緩和する同等の効果(約50%削減)を示唆

なぜ?

この変化は、人々の「考え方(差別意識)」が変わったからか?

→ No:実験前後で性差別的な態度の変化は見られない。

研究から示唆されるのは、変わったのは考え方ではなく「行動」

-> 女性が多数派になったり、女性がリーダーになったりする「制度的な変化」により、人々が差別的な行動を抑制することを示唆

発見4: 誰が女性を過小評価する?

投票内訳を見ると、女性の影響力低下は男性だけでなく、女性自身の投票行動にも起因

- 女性は自分自身や他の女性を「過小評価」
- 男性は状況に関わらず、他の男性を「過大評価」する傾向

-> 女性に対する男女からの性別バイアスと、男性に対する男性からの性別バイアスにより、女性は自動的に不利な立場に置かれることを示唆

まとめ

女性に対する差別ペナルティやバイアスを減らすには、「数を増やす」か「リーダーに任命する」という制度設計が有効

人々の意識改革(考え方の変化)を待つよりも、即効性がある可能性

Reference: Karpowitz, C. F., O’Connell, S. D., Preece, J., & Stoddard, O. (2024). Strength in Numbers? Gender Composition, Leadership, and Women’s Influence in Teams. Journal of Political Economy, 132(9), 3077-3114. doi:10.1086/729578

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