起業家は「誰に」「どう頼めば」投資家を紹介してもらえるのか
起業家のネットワーク活性化戦略を複数のフィールド実験で検証。投資家への紹介を引き出すために、誰にどのように依頼すべきかを実証的に明らかにする。
2026.06.01 約3分で読めます
起業家は「誰に」「どう頼めば」投資家を紹介してもらえるのか?Nai et al. (2022)
前提
この研究では、起業家の「ネットワーク活性化戦略」を2つのステップに分解
誰を選ぶか(Selection):
自分の人脈の中から、誰に紹介を頼むか?
どう説得するか(Persuasion):
その相手に、どう働きかけて協力を取り付けるか?
調査方法:フィールド実験
シンガポールの起業家42名が、4人の投資家パネルに会うために、起業家の人脈684名に紹介依頼するプロセスを分析
紹介を依頼する相手をリストアップする方法を2つに分類
自分中心の選択:
自分と親しい、信頼できる人を選ぶ
投資家中心の選択:
ターゲットの投資家と繋がりがありそうな人を選ぶ
次に、選んだ相手に送る依頼メッセージを、以下3パターンからランダムに設定
A: 基本形
「投資家への転送をお願いします」とだけ伝える
B 返報性
基本形+「将来必ずお返しします」と約束
C: 金銭的インセンティブ
基本形+「資金調達額の1%を成功報酬として支払います」と提案
どのような戦略が最も効果的だったのか?
発見1:「誰に頼むか」が最も重要
紹介の成功確率が最も高かったのは投資家と繋がりがありそうな人に頼んだ場合の「投資家中心の選択」
-> 「自分中心の選択」(親しい友人など)に比べ、その成功率は約6倍
いくら自分と親しい人に頼んでも、その人が投資家と繋がっていなければ、紹介の連鎖は途中で途切れる
一方、自分との関係が多少疎遠でも、投資家と直接繋がっている人に頼む方が効率的
発見2:「どう頼むか」も効果あり
最も効果的だったのは、「返報性(将来お返しします)」のアプローチ
何もしない基本形に比べ、紹介の成功確率が約3倍に向上
「恩は返す」という約束が、相手の協力意欲を引き出す強力なフックになることを示唆
発見3:「お金」では動かない?
一方「金銭的インセンティブ(成功報酬)」の効果は統計的に有意とならず
-> 投資家への紹介という行為は、ビジネス取引ではなく、信頼や人間関係に基づく社会的な行為と見なされている可能性
よって「お金で動く」と思われることを嫌う人がいるから効果が薄いのか?
まとめ
投資家への扉を開くための鍵:
知り合いの誰に頼む?
→ 自分との近さより、投資家との近さで選ぶ
どうやって頼む?
→ 金銭的な報酬ではなく、「将来の恩返し」を約束する
Nai, J., Lin, Y., Kotha, R., & Vissa, B. (2022). A foot in the door: Field experiments on entrepreneurs' network activation strategies for investor referrals. Strategic Management Journal, 43(2), 323–339.
