論文レビュー

ジェットコースターのような起業家のエネルギーをコントロールする方法

起業家のエネルギーは大きく変動する。その動的なモデルを構築し、エネルギーの源泉・変動・マネジメントのメカニズムを理論化する。

2026.06.03 約3分で読めます

論文紹介Kakatkar et al. (2024) · Entrepreneurship Theory and Practice 論文を読む →

ジェットコースターのような起業家のエネルギーをコントロールする方法 (Kakatkar et al., 2024)

前提とデータ

この研究での「起業家エネルギー」とは「ベンチャーを構築するために創業者が感じる、活力に満ちた活性化のレベル」

ドイツ🇩🇪のスタートアップ14社、創業者38人を16ヶ月にわたり追跡

→ 創業者のエネルギーがどのように変動し、何によって回復・枯渇するのか分析

発見1:エネルギーの源泉と消費

創業者のエネルギーは「起業家としての約束(Entrepreneurial Promises)」を交わし、それを果たす過程で消費されたり、生み出される

ここでの「約束」とは、自分や共同創業者、顧客や投資家に対して行う「こうする」「こうなる」という誓い

-> この約束が守られるとエネルギーは高まり、破られると消耗

発見2:エネルギー回復の2つの方法

エネルギーが低下した時、回復する方法は2つ

1️⃣ 事業の外での回復:
スポーツや家族との時間など、仕事から心理的に離れて趣味や休息に没頭

-> エネルギーが少し低下した正常な状態で有効

2️⃣ 事業の中での回復:
一方、エネルギーが完全に枯渇し、事業への幻滅を感じる「起業家疲労(Entrepreneurial Fatigue)」の状態に陥ると、外での休息は効果的でない

この「破壊的フェーズ(Destructive Phase)」から抜け出す鍵は、他者からのエンパワーメントによって「自分にはできる」と感じる経験

-> 「起業家疲労」に陥った創業者は:
❌ 仕事から離れても、頭の中は事業のことでいっぱいなので回復効果が高いわけではない

✅ 共同創業者からのタスクや感情面でのサポート、顧客など外部関係者からの事業アイデアに対する称賛など、仕事に関わる「エンパワーされる社会的相互作用」を通じて、再びエネルギーを取り戻す

発見3:エネルギー枯渇の末路

この「エンパワーメント」を得られなかった場合、創業者は事業に対するエネルギーを失う

-> 違う活動や可能性に焦点が当たり始め、最終的には事業そのものから撤退

メインの活動から離れて休むことが、むしろ撤退を加速させる

モデルの提唱

発見を基に著者は「起業家エネルギーの動的モデル」を提唱

1️⃣ ユーダイモニア・フェーズ:
エネルギーが浮き沈みしつつも、外部での回復が可能

2️⃣ 破壊的フェーズ:
エネルギーが枯渇し、「起業家疲労」に陥る

3️⃣ 転換フェーズ:
エネルギーを他に向け、撤退に至る

-> 「破壊的フェーズ」から「ユーダイモニア・フェーズ」に戻るには、事業内での「エンパワーメント」が不可欠と提示

まとめと示唆

🔹起業家の視点:
エネルギー低下のサインを見逃さず、休息を取ることが重要

しかし、本当に深刻な「疲労」を感じたら、一人で抱え込まず、共同創業者やメンターに助けを求める「エンゲージメント戦略」が回復の鍵

🔹支援者の視点:
疲弊した起業家にかけるべき言葉は「休みを取ろう」ではないかもしれない

「あなたならできる」という事業に関連する前向きな言葉や具体的なサポートが、再び起業家を立ち上がらせる力になる可能性

起業家の成功は、情熱やスキルと同時にエネルギー」という有限かつ再生可能な資源のマネジメントにもかかっている

Reference: Kakatkar, A., Patzelt, H., & Breugst, N. (2024). Towards a Dynamic Model of Entrepreneurial Energy. Entrepreneurship Theory and Practice, 48(4), 1037-1081. doi:10.1177/10422587231224197

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