論文レビュー

資金調達の場で趣味を語ることはプラスかマイナスか──起業家のレジャー・パラドックス

投資家との対話で趣味やレジャーを開示することが、起業家の評価にどう作用するかを制度理論の視点から分析。開示の効果が文脈で変わることを示す。

2026.05.18 約3分で読めます

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資金調達の場面で趣味について語ることは、プラス?マイナス? Waddingham et al. (2025)

背景

近年の研究では、起業家の余暇活動が創造性やウェルビーイングを高め、事業機会の認知力や全体的なパフォーマンス向上につながると示唆されている

一方で、「起業家は寝る間も惜しんで働くべき」という考えもまだまだ根強い

-> では、投資家は余暇を楽しむ起業家をどう評価するのか?

理論:ワーカホリックという制度的規範

この研究が土台とするのは制度的な規範

研究仮説:
社会には「こうあるべき」という暗黙のルールが存在し、それに従う個人は正統性を得るが、逸脱すると評価を下げられる

-> 初期ステージの起業家に対して「ワーカホリックであれ」という強力な制度的規範が存在する

仮説検証のため、Kickstarter上の8511件のキャンペーンを分析し、その後436人を対象にした実験も行う

発見1:余暇の開示はマイナスに働く

キャンペーンで趣味や余暇について言及した起業家は、そうでない起業家に比べて、資金調達額が有意に低い

-> 「ワーカホリックであれ」という規範から逸脱したと見なされ、投資家からの評価を下げたことを示唆

発見2:認知バイアスが理由

架空のキャンペーンを見せて、投資判断を尋ねる実験をした結果、次の因果連鎖が明らかに

1. 余暇の開示
2. 「この人はワーカホリックではなさそう」と認識
3. 「起業家として正統性(本気度)に欠ける」と評価
4. 投資意欲の低下

「余暇を楽しむ=本気度が低い」という認知バイアスが、資金調達の妨げに

発見3:支援者の性別で反応が違う

女性の支援者は、男性の支援者に比べて、起業家がワーカホリックであることの重要性を低く評価する傾向

-> プライベートを犠牲にするような規範に対して、女性の方が懐疑的であるという従来の知見と一致

まとめ:起業家の余暇パラドックス

余暇は起業家のパフォーマンスを高めることがわかっている

しかし、余暇の開示は投資家からの評価を下げ、資金調達を困難にするケースがある

-> 起業家は、自身のウェルビーイングと「ワーカホリック神話に基づく評価」との間で、微妙な綱渡りを迫られていることを示唆

起業家も人間なので、休息は必要。「休むことは当たり前だし、むしろ事業パフォーマンスも上がる」という認識が広がることで、より健全なエコシステムに近づく。

詳しくは論文を👇
Waddingham, J. A., Chandler, J. A., Alexander, K. C., Zafar, S., & Anglin, A. (2025). The leisure paradox for entrepreneurs: A neo-institutional theory perspective of disclosing leisure activities in crowdfunding pitches. Journal of Business Venturing, 40(2). doi:10.1016/j.jbusvent.2024.106467

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