起業家への世間のジェンダー・バイアス──資金調達に成功した時と失敗した時
資金調達の成否によって、起業家に向けられるジェンダー・バイアスがどう変わるかを検証。スポットライトが当たるとき女性起業家がより厳しく評価される構造を示す。
2026.05.13 約3分で読めます
起業家に対する世間のジェンダー・バイアス:資金調達に成功した時、失敗した時 (Titus et al., 2025)
背景
ソーシャル・メディアの利用が当たり前になった今、起業家に対する「好き嫌い」という一般大衆の感情的な評価も、無視できない影響力を持ってる
「一般大衆の目」に潜む、より繊細なジェンダーバイアスを分析
調査1
人気番組『Shark Tank』(マネーの虎の米国版)に出演した起業家495組を分析
番組放送後、SNS(旧Twitter, Facebook)で出演起業家に対する感情的なコメント(ポジティブかネガティブか)を大規模テキスト分析で定量化
発見1:女性は好意的に見られる
単純比較では、女性リーダーが率いる創業チームは、男性チームよりもSNS上でポジティブな感情を向けられていた
出資を受ける際に女性が不利になる現象とは違い、一般的な評価はむしろ好意的
発見2:成功がペナルティに変わる時
しかし、女性チームが複数の投資家からオファーを受けると、大衆からのポジティブな感情は有意に減少
一方、男性チームが複数の投資オファーを受けると好感度が緩やかに上昇
-> 投資家との交渉で主導権を握って勝ち残る姿が「女性らしくない」と見なされ、反発を招いた可能性
発見3:「男性からのお墨付き」の効果
女性チームの成功に対するネガティブな反応は、チームが男性投資家とディールを成立させると抑制される傾向
-> 男性ゲートキーパーからのお墨付きが、女性チームの正統性を補強したと解釈可能
調査2
女性のみに発生する「成功ペナルティ」を詳しく分析するため、433人を対象に実験を実施
-> 起業家の「性別」「成功/失敗」「交渉態度(強気か否か)」をランダムに割り当て、好感度を測定
発見4:複雑なダブルバインド
🔹資金調達に成功した場合 :
男女ともに、「強気な交渉」は好感度を下げるため、男女差はない。
しかし、投資オファー数が増えるにつれて男性は好感度が上昇、女性は逆に下がる
🔹強気に交渉したが失敗した場合:
男性は強気な態度が許容されるが、女性の場合のみ好感度が著しく下がる
まとめ:女性起業家に向けられる視線
女性起業家は、複数のオファーを獲得すればするほど「強気だ」と叩かれ、交渉に失敗しても「思いやりに欠ける」と叩かれる
ただし、権威ある男性のお墨付きがあれば、そのペナルティは緩和される
-> 男性にはみられない反応。複雑で不平等な評価構造があることを示唆
Titus, V. K., O’Brien, J. P., Parker, O., & Aumueller, C. (2024). When the Spotlight Burns: Gender Bias in the Public Perception of Entrepreneurs. Business & Society, 64(1), 126-162. doi:10.1177/00076503241255512
