政策が逆効果になるとき──投資家を増やすはずが…エンジェル投資の自然実験
エンジェル投資を促す優遇策が、かえって意図せぬ結果を招くことを自然実験から示す。インセンティブ設計が投資行動に与える複雑な影響を検証する。
2026.04.08 約3分で読めます
政策が逆効果になるとき:投資家を増やすはずが… (Solodoha et al., 2023)
前提
投資家は、スタートアップに資金、経験、ネットワークを提供する重要な存在
そのため、様々な国が投資を増やすための税制優遇策を導入
では、優遇策の導入によって、本当に1社あたりの投資家の数は増えるのか?
調査方法
2011年にイスラエル🇮🇱で導入された、シード期ハイテク企業への投資を優遇するエンジェル法に着目
法律導入の前後で、
🔹対象となったシード期の企業(処置群)
🔹対象外のシード期以外の企業(対照群)
に投資したエンジェル投資家の数を比較
-> 分析対象は、イスラエルのハイテクスタートアップ6,840社とエンジェル投資家9,095人
発見1:投資家の減少
エンジェル法導入後、優遇措置の対象となったシード期のスタートアップ1社あたりに投資するエンジェル投資家の数は約33%減少
-> 良かれと思って導入した政策が、全くの逆効果を生んでいた可能性
発見2:金銭的インセンティブ以外の要因が関係
15人のエンジェル投資家へのインタビューを通じて、投資家が減った背景を探索
1️⃣ 煩雑な手続きと時間コスト:
税制優遇を受けるための条件が複雑で、申請に多大な時間と労力がかかる
-> 「その手間をかけるくらいなら、他の投資先を探した方が良い」と考える
2️⃣ 評判リスク:
実際に税制優遇を受けられるのは、3年後のスタートアップ業績で決まる。
よって、条件を満たせず優遇を受けられなかった場合、その投資は失敗を意味する
-> 周囲から「投資家としての目利き能力がない」と見なされ、評判を落とすリスク
<示唆>
政策による潜在的な金銭的メリットがあったにもかかわらず、「時間的コスト」と「評判リスク」の増大がそれを上回っていた
その結果、投資家は面倒な政策が適用されるシード期の企業を避け、他のステージへの投資をシフトさせた可能性
まとめ
スタートアップ支援策を設計する際は、単なる金銭的インセンティブだけでなく、支援対象者の心理や行動原理を深く理解する必要がある
「関係者が本当に価値を置くものは何か?」
「何がリスクになりうるか?」
これらの問いを踏まえながら、政策が逆効果にならないように一定の工夫が必要であることを示唆
論文はこちら👇
Solodoha, E., Rosenzweig, S., & Harel, S. (2023). Incentivizing angels to invest in start-ups: Evidence from a natural experiment. Research policy, 52(1). doi:10.1016/j.respol.2022.104634
