起業家をめぐるジェンダー平等の現在地──女性的な装いは評価をどう変えるか
女性起業家とその事業に対する世間の認識を実験的に検証。性別と「女性的な装い」が起業家としての評価にどう影響するかを明らかにし、ジェンダー平等の課題を示す。
2026.04.13 約3分で読めます
起業家におけるジェンダー平等、現時点での課題 (Pleyers et al., 2025)
背景
従来の研究では、起業家に対して「男性的」なイメージが強いため、女性起業家は不利な評価を受けやすいとされてきた
しかし近年、社会のジェンダー観も少しずつ変化している。より細かいニュアンスを理解することが必要となる
発見1:女性の方が有利な評価
最初の実験では、参加者178名が起業家の写真を見ながら起業家とその事業を判断
✅女性起業家は男性よりも高い評価
✅女性が率いる事業は、認識される金銭的価値や将来の成功の可能性について男性の事業よりも高い評価を受ける傾向
発見2:女性らしさが高まると低評価に
追加実験では228名が装飾品をつけている/つけていない状態で評価
-> 「装飾品あり」の女性は、「装飾品なし」の女性に比べて、人物・事業ともに評価が低くなり、投資したいと思われる金額も有意に減少
発見1と2が意味すること:女性であることと女性的であることの違い
✅「女性であること」はプラスに働く(発見1)
❌「女性らしさを強調すること」は、ネガティブな評価につながる(発見2)
-> 「女性であれ、しかし女性的すぎるな(Female but not too feminine)」という見えざる規範
<なぜ「女性らしさ」がマイナスに働くのか?>
論文では、評価者の頭の中にある「起業家のプロトタイプ(典型的イメージ)」との関連を示唆
-> 装飾のない女性の姿が、よりプロトタイプ的であると認識され情報処理がしやすく(processing fluency)、好意的な評価につながる可能性
発見3:投資家の場合
投資経験のある87名を対象に同様の実験を実施
男女比較:
ここでも女性起業家への評価と投資額は高くなる傾向
装飾品の有無:
同じく、投資額は「装飾品なし」の女性の方が高くなる
-> ただし、投資家の場合、装飾品の有無は「起業家本人や事業への印象評価」には有意な差がみられず
※ 論文ではこの理由について、実験で男女両方の起業家を評価したため、評価者の注意が性別の差に向かい、女性間の装飾品の有無というより細かな特徴の影響が薄まった可能性を指摘
※いずれにせよ、最終的な「投資額」には無意識のバイアスが影響
まとめ
女性であること自体が有利となる環境であっても、同時に「どの程度女性性が表現されているか」によって評価にバイアスが発生する可能性
自己表現の困難さと、有望な機会が見過ごされるリスクについて示唆
論文はこちら👇
Pleyers, G., Janssen, F., & Shinnar, R. S. (2025). Female but not too feminine. Perceptions of female entrepreneurs and their ventures: the role of gender and feminine adornments. Entrepreneurship & Regional Development, 37(5-6), 692-713. doi:10.1080/08985626.2025.2458015
