論文レビュー

なぜ女性起業家はM&AやIPOといった成功イグジットを経験しにくいのか

創業者の性別が企業のイグジット経路に与える影響を分析。女性創業企業がM&AやIPOに至りにくい背景に、企業規模とVC資金調達という媒介要因があることを示す。

2026.03.23 約3分で読めます

論文紹介Yavuz et al. (2025) · Small Business Economics 論文を読む →

なぜ女性起業家は、M&AやIPOといった成功裏のイグジットを経験しにくいのか? (Yavuz et al., 2025)

研究背景

女性起業家の出口戦略について、これまで主に「事業の失敗・閉鎖」に焦点が当てられてきた

-> しかし、M&AやIPOといった「成功の出口」におけるジェンダーギャップも重要な課題

本研究は、以下の2つのフェミニスト理論をレンズとして利用

1️⃣リベラル・フェミニズムの視点:
社会に根付く構造的な差別や機会の不平等が、女性の成功を阻害

2️⃣ソーシャル・フェミニズムの視点:
社会化の過程で形成される価値観や役割期待の違いが、男女の選択や行動を異なるものにする

データ

分析対象は、スタートアップデータベースCrunchbaseから抽出した米国のベンチャー企業18,495社

創業者、資金調達、イグジットに関する詳細なデータを用いて、ジェンダーの影響を検証

発見1:出口にも存在するジェンダーギャップ

女性創業の企業は、男性創業の企業に比べ、M&AやIPOといったポジティブなイグジットを経験する確率が有意に低い

発見2:「企業規模」が最大の鍵

女性創業の企業がM&Aに至りにくい理由の25%は、「企業規模が小さいこと」によって説明できると判明

IPOに関してはこの傾向がさらに顕著:
女性創業者がIPOに至りにくい理由の大部分は、企業規模の小ささによって説明可能

-> 企業規模の差が、イグジットの差、特にIPOにおける差を生む重要なメカニズムであることを示唆

発見3:なぜ企業規模が小さくなるのか?

論文では、冒頭の2つの理論を用いて説明:

1️⃣ 内面的な選択(ソーシャル・フェミニズムの視点):
女性起業家は富や地位だけでなく、ワークライフバランスや柔軟性といった非金銭的な価値を社会的に重視する傾向を指摘

→ 意図的に事業規模をコントロールしている可能性

2️⃣ 外部からの制約(リベラル・フェミニズムの視点):
今回のデータ分析では、外部からの制約が成長を妨げている重要な経路も明らかになった

-> VC(ベンチャーキャピタル)からの資金調達である。

因果の連鎖

この研究が明らかにした因果の連鎖は以下:

女性創業者
-> VC資金調達が少ない
-> 企業規模が小さい
-> ポジティブなイグジットが少ない

(補足:なぜ女性創業者はVC調達額が少ないのか?

投資家の無意識バイアスについて過去の研究で指摘されている

例:先行研究 (Kanze et al., 2018) では、投資家は男性起業家には「どうやって成功させるか」を問う一方、女性起業家には「どうやって失敗を防ぐか」を問う傾向があり、質問の違いが調達額の差を生む一因とされる)

まとめ

女性起業家のイグジットにおけるギャップの根源には、企業規模の差という大きな壁が存在

その背景には、2つの理論的側面が考えられる

1️⃣内面的な選択(ソーシャル・フェミニズム):
ワークライフバランスなどを重視する価値観から、女性起業家が意図的に急成長を追求しない可能性

2️⃣外部からの制約(リベラル・フェミニズム):
VC業界に根強く残るジェンダーバイアスが資金調達を妨げ、企業の成長機会を奪っている可能性

単に資金へのアクセスを改善するだけでなく、女性起業家の多様な価値観や本人たちが直面する社会構造の両方を理解することの重要性を示唆

論文はこちら👇
Yavuz, R. I., Kumar, S., Zbib, L., & Nigro, P. (2025). Founder gender and firm exit routes: The mediating roles of firm size and VC financing. Small Business Economics, 65(1), 643-666. doi:10.1007/s11187-025-01006-5

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