SNSで「モノ」の自慢は嫌われ「コト」の自慢は許される?──本物らしさが印象を決める
6つのオンライン実験。物質的購入の投稿を繰り返すと「本物らしくない」と見なされ好感度が下がる一方、体験報告は比較的好印象。ただし金銭や企業案件の匂いでその優位性は失われる。
2026.01.12 約4分で読めます
研究の背景と問い
SNSの普及により、かつては見えにくかった「体験」も、高級品と同じように他者へのシグナルとして機能するようになった
しかし、SNS上での意図的な投稿は、見る人に「自慢したいだけでは?」と動機を勘ぐらせやすい
-> 本研究は「どのような投稿が、なぜ、より良い印象を与えるのか?」を問う
キーコンセプト解説:投稿の「本物らしさ」
この研究の鍵は、投稿の「本物らしさ(Perceived Authenticity)」という概念だ。これは、その投稿が「本当に自分のことを共有したい」という純粋な自己表現の欲求(内的動機)から来ていると受け取られる度合いを指す
逆に、「他人によく見られたい」という自己PR(外的動機)から来ていると見なされると、「本物らしくない」と判断される。
研究の方法論
6つの一連のオンライン実験を実施。参加者は、架空のSNSユーザーの投稿を見て、その人物に対する印象や投稿の「本物らしさ」を評価
-> 投稿の種類(物質的 vs. 経験的消費)、投稿の頻度(1回 vs. 複数回)、ハッシュタグの有無などを操作し、その因果効果を検証
発見1:複数投稿で差がつく
1回だけの投稿では、SNSという文脈の曖昧さから投稿の意図を判断しにくいため、「モノ」と「コト」の消費報告が与える印象の差はわずか
しかし、複数回にわたって投稿が続くと両者の差は明確になり、「モノ」の購入報告を重ねた投稿者の印象は著しく悪化
一方、「コト」の体験報告が続いても、印象はほとんど悪化しなかった
発見2:「モノ」の投稿は本物に見えない
なぜ複数回の「モノ」の投稿は嫌われるのか?
-> 見る人がその投稿を「本物らしくない」と感じるから
何度も物質的な購入をアピールする行為は、純粋な自己表現ではなく、自己PRのための戦略的な行動だと解釈され、投稿者の印象を下げていた
発見3:「体験」の優位性が消えるとき
しかし、「コト」の投稿なら何でも許されるわけではない
体験報告の優位性は、他の手がかりによって「本物らしくない」と判断されると消え去った
例えば、
- 投稿に金額を匂わせる
- 他ユーザーから自慢だと指摘されるコメントが付く
- 企業キャンペーンのハッシュタグが付いている
このような場合、体験報告でさえも外的動機(=下心)があると見なされ、物質的消費の投稿と同レベルまで印象が悪化
発見4:投稿の組み合わせと比率が印象を決める
では、モノとコトの投稿を混ぜた場合はどうだろうか
-> 4回の投稿のうち、コトの投稿が多ければ多いほど、投稿者の印象は良くなる傾向
しかし、興味深いことに、投稿の半分(2回)以上が「コト」であれば、すべてを「コト」にした場合と印象の良さに大きな差はなかった
-> 完全に「モノ」を排除しなくても、バランス次第で良い印象を維持することは可能
本研究の結論
SNSで繰り返し「モノ」の購入を報告すると、「本物らしくない」と見なされ、好感度が下がる
一方、「コト」の体験報告は比較的良い印象を与えるが、その優位性は、投稿に金銭的な動機や企業案件といった下心が垣間見えると失われる
SNSにおける印象形成は、投稿がどれだけ純粋な自己表現として受け取られるか、すなわち「本物らしさ」に大きく左右されるのである。
実務への示唆
本研究は、SNSでの印象が「いいね」やクリックといったエンゲージメント行動に直接影響することも示唆
企業がUGC(ユーザー生成コンテンツ)を促進する際、消費者は「企業にやらされている」と見られることで自身の評判が下がることを懸念する可能性がある
マーケターは、単に購入報告を促すだけでなく、それが消費者の純粋な自己表現として映るような、体験を共有する文脈を設計することが重要で
書誌情報
Valsesia, F., & Diehl, K. (2022). Let Me Show You What I Did versus What I Have: Sharing Experiential versus Material Purchases Alters Authenticity and Liking of Social Media Users. Journal of Consumer Research, 49(3), 430-449.
