イノベーション

スペシャリストとジェネラリスト、クリエイティブなのはどちらか?

2020.09.01

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柏野 尊徳 | Takanori KASHINO

アイリーニ・マネジメント・スクール

イノベーション研究の最先端:世界のトップ・ジャーナル紹介シリーズ -

シリーズ概要

世の中には、最先端かつ高品質の研究結果が掲載される世界トップレベルの論文誌(トップ・ジャーナル)がいくつかあります。このシリーズでは、主に経営学のトップ・ジャーナルに焦点を当て、イノベーションに関わる最先端の研究を紹介します。

本日のトップ・ジャーナル

Administrative Science Quarterly:ASQ
Teodoridis, Florenta, Michaël Bikard, and Keyvan Vakili. "Creativity at the Knowledge Frontier: The Impact of Specialization in Fast- and Slow-Paced Domains." Administrative Science Quarterly 64, no. 4 (2018): 894-927.

あなたはスペシャリストですか、それともジェネラリストですか?

スペシャリストやジェネラリストであることに、どれくらい強いこだわりを持っているでしょうか。

今日のテーマは「イノベーション活動において、スペシャリストとジェネラリストのどちらが高いパフォーマンスを出すのか」です。

この問題について示唆を与えてくれるのが、Administrative Science Quarterly:ASQに掲載された論文です。

この論文では、ソ連崩壊前の10年と崩壊後の10年を比較しながら、特定の研究領域でクリエイティブな成果を出したのがジェネラリストとスペシャリストのどちらであったか、という切り口で調査・分析が行われました。

結論は、変化の速度が比較的ゆるやかな状況では、様々な知識を幅広く知っているジェネラリストの方が、既存の知識を組み合わせながらクリエイティブな成果を出すことができるとわかりました。

その一方で、変化の速度が比較的激しい状況では、特定の領域で深い知識を持っているスペシャリストの方が成果が高いという結果になりました。

今回の研究結果が、どこまで一般的な企業でイノベーション活動に取り組む関係者にも当てはまるかという課題はありますが、研究結果から推察すると次のことが言えるでしょう。

もし、あなたの企業が所属する業界が、ゆっくりと変化する傾向が強いのであれば、どちらかといえばジェネラリストの方が成果を出しやすいはずです。逆に、テクノロジー業界のように極めて素早いスピードで業界の考えや構造が変わっていく環境で働いているのであれば、スペシャリストである方が成果が出しやすくなります。

今回の研究結果の別の示唆としては、イノベーション活動にとりくむチームをつくる際に、外部環境もふまえてメンバー構成をどうするかという点でも有効かもしれません。

ただ、将来的にどれくらいの変化があるのかをうまく予測するのは難しいですね。そうすると、状況や場面に応じてスペシャリストやジェネラリストでうまく協力し合える体制をいかにつくっていくのか、という方が企業経営においては重要になってくると考えられます。

スペシャリストとジェネラリスト、あなたの会社ではどのような形で協力しあえていますか?

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