ガールボスの興隆と凋落──いかに熱狂が生まれ、急速に下火になったのか
「若く自信に満ち自力で成功する女性起業家」を意味するガールボス。2,671件のメディア記事を分析し、ジェンダーと社会的期待が起業の熱狂と凋落をどう形作ったかを示す。
2026.09.30 約3分で読めます
背景
この研究は「若く自信に満ち、自力で成功する女性起業家」を意味するガールボス(Girlboss)について2,671件のメディア記事を分析。
ネオ・リベラリズムとポスト・フェミニズムなどの思潮を土台に、社会的な障壁なしに女性も成功できるとする理想像がメディアによって一時期広がった。
ブーム期(2014-2017年)
ガールボスを称賛し、理想像として描く。メディアの報道フレームは大きく3つ
1️⃣卓越化: 「普通じゃない」「唯一無二」と強調し、学歴や実績を称賛
2️⃣ 個人化: 外見や女性らしいとされる性格(ケア精神、共感力)を褒め称える
3️⃣ 矮小化: ファッションや私生活などビジネスと直接関係ない事柄を伝え、親しみやすさを演出
ブーム期のガールボス像は、努力と才覚で成功を掴み、仕事も家庭も完璧にこなすスーパーウーマン
これからの時代を牽引する理想像としてメディアで扱われる一方、起業家としての経営能力や事業内容は軽視される傾向も
失墜期(2018-2021年)
しかし、ひとたび失敗やスキャンダルが明らかになるとメディアの論調は一変。今度は彼女たちを断罪する懲罰モードへ
1️⃣悪者化:失敗や過ちを過剰にネガティブに描き、「悪者」「詐欺師」として断罪
2️⃣ 個人攻撃: 「女性らしさ」の規範から外れたとして行動を厳しく批判
3️⃣ からかい: かつて称賛した服装や商品特徴などが冷笑の対象に
4️⃣ 分断:世代や人種の違いを利用して対立を煽る
論文での主張:まとめ
特にセラノス社のエリザベス・ホームズ裁判は象徴的。彼女の失敗は個人の問題だけでなく「女性起業家全体の信頼を損ねた」かのように描かれた。
しかし、同様の不正を犯した男性起業家(例:FTX社のサム・バンクマン=フリード氏)が、「男性起業家全体の信頼を損ねた」と責任を問われたわけではない
なぜ、少数の成功・失敗事例をもって、全ての女性起業家がそうであるかのように「ブームと失墜」が起きたのか?
論文では、メディアが作り上げる理想の女性起業家像が、そもそも達成不可能なほど高い期待を伴っているためだと指摘。
期待が高すぎるがゆえに、それに応えられないと一転して厳しい社会的制裁が加えられる。
同様の対応が男性起業家になされることは珍しく、社会的マイノリティに対する支配的な言説の現れである可能性を示唆
Reference: Byrne, J., & Giuliani, A. P. (2025). The rise and fall of the girlboss: Gender, social expectations and entrepreneurial hype. Journal of Business Venturing, 40(4). doi:10.1016/j.jbusvent.2025.106486
