論文レビュー

なぜ多くの研究は面白いと感じられないのか──問題化によるRQの作り方

面白い研究ができない原因は、リサーチクエスチョンを既存研究の「ギャップ穴埋め」で設定すること。前提を疑い問い直す「問題化(Problematization)」によるRQ設定法を提案する。

2026.12.07 約3分で読めます

論文紹介Alvesson & Sandberg (2011) · Academy of Management Review

-> 原因:リサーチ・クエスチョン (RQ) を設定する時に「既存研究のギャップ発掘と穴埋め (Gap-spotting) 」に終始しているから

これでは、面白くて影響力のある経営理論を生み出せない

1. ギャップ発掘 (Gap-spotting) とは?

-> 既存文献における未解明な点や欠けている部分(Gap: ギャップ)を見つけ出し、それを埋めることで理論的な貢献を目指す行為。

よくあるスタイルとして、論文では「この研究は〇〇における□□というギャップを埋める」という常套句が多用される

2. ギャップ発掘 (Gap-spotting)の限界

-> 既存理論の枠組みを前提とした課題の抽出になるため、そこから生まれる研究は革新的でなく漸進的(Incremental) になりがち

既存理論が暗黙のうちに置いている「前提(assumption)」をそのまま受け入れるので、「面白い!」と思える新しい視点は生まれにくい

3. 解決法:「理論的問題化* (Problematization)」

-> 真に面白く、独創的で影響力のある理論は、既存理論の「前提(assumption)」が何か特定し、既存の枠組みそのものを問い直すRQから生まれる。

単なるギャップ埋めではなく、土台そのものに対して疑問を投げかける

*柏野意訳

4. では、どのような「前提」を問い直せばいいのか?大きく5つ

1️⃣ In-house: 特定の学派内で共有された前提
例: 人は常に合理的に行動するものとして研究する学派

2️⃣ Root metaphor: 対象を比喩化した前提
例: 組織を、人々の価値観が結束してできた「文化」として捉える

3️⃣ Paradigm: 存在論・認識論・方法論に由来する前提
例:人の特性を分解し客観的に捉える

4️⃣ Ideology: 政治 / 道徳 / ジェンダー的な前提
例: 「なぜ人は怠けるのか?」という問い (「働くべき」という道徳的価値観)

5️⃣ Field: 分野内で共有される広範な前提
例: 「経営」なるものが存在する

5. 理論的問題化 (problematization) を実践する6原則

1️⃣ 文献領域の特定
-> 問い直す対象となる文献群を明確にする。特に、その中でも後の研究の方向性を決定づけた主要文献を特定

2️⃣ 前提の特定と明確化
-> その文献群の根底にある上記5類型の前提を明らかにする

3️⃣ 既存の前提を評価
-> 特定した前提を問い直し、挑戦する価値はあるか?今、この前提を問い直すとして、そのタイミングは適切か?

4️⃣ 新しい前提の構築
-> 既存文献の前提に挑戦した結果、どのような新しい前提を提示できるか?
その前提によってこれまでの研究やこれからの研究はどう変わるのか?

5️⃣ オーディエンスとの関係を考察
-> 挑戦する前提は誰が支持しているか?
この挑戦は受け入れられるか?
挑戦が成功した時の勝者と敗者は誰か? (政治的側面)

6️⃣ 新しい前提を評価
-> 新しい前提は「当たり前」と「バカバカしい」の間にある「面白い」ものか?
-> 次に続く新しい研究の流れを生み出すか?

6. まとめ

既存理論の枠組みで「ギャップ発掘 (Gap-spotting)」するのではなく、「理論的問題化 (problematization) 」を通じて既存理論の前提に挑戦しよう。

これにより、面白いと評価され、長くインパクトの続く研究を実践できる。

Reference: Alvesson, M., & Sandberg, J. (2011). Generating research questions through problematization. Academy of Management Review, 36(2), 247-271.

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