AIイノベーションマネジメント

AI時代の組織経営:「規模・範囲・学習」の再評価と革新

2023.10.11

アバター

柏野 尊徳 | Takanori KASHINO

アイリーニ・マネジメント・スクール

AI時代の組織経営:「規模・範囲・学習」の再評価と革新

ChatGPTを始めとする生成型AIの台頭が多くの職種に影響を及ぼしています。では、様々な職種で構成される組織において、どのような点を意識しながらイノベーションに取り組む必要があるでしょうか。

組織経営を考察する一つの理論として、経営史学者アルフレッド・チャンドラーの提唱した「規模・範囲・学習」という3つのキーポイントが参考になります。

  1. 規模(Scale): 規模拡大を通じて企業が多くの製品やサービスを効率よく提供できる
  2. 範囲(Scope): 様々な製品/サービスの提供により、異なる市場や顧客層への幅広い対応
  3. 学習: 企業が生産・流通・マネジメントへの投資を通じて新しい知見や能力を得る

従来型の経営では、規模・範囲・学習の推進は大企業の業績を高める一方で、サイロ化も引き起こしていました。

なぜなら、各部門や事業部が生産・流通・マネジメントへの投資によって高度に専門化し、それぞれが独自のノウハウやデータを蓄積するからです。それらの情報・知識は部門内でのみ利用され、他部門との共有は限定的です。

言い換えると、学習を通じて規模と範囲を拡大すればするほど、組織はサイロ化の方向に進んでいたのです。

組織のサイロ化は規模や範囲の拡大と共に生まれる副産物という側面もあり、企業が成長しているのだから最優先で解決すべき深刻な問題ではないという考えもできました。

しかし、AI導入を前提とするこれからの時代にとってはサイロ化は致命的となります。なぜなら、AIの有効活用にはデータの集約と分析が必須であり、これが組織全体で統一されたプロセスを必要とするからです。

例えば、MicrosoftがAI活用するためのトランスフォーメーションを行ったように、共通のルールとアルゴリズムを利用してソフトウェアやデータベースを組織全体で結びつける能力獲得は、企業がAI導入に成功し成果を上げるか、時間と資金を浪費してしまうかの分かれ道となるでしょう。

関連記事

ブログTOP