起業家ピッチでは「語る力」が重視されるが「聞く力」も大事では?
スタートアップの成功はステークホルダーの支援にかかる。起業家個人の傾聴能力と、ベンチャー組織の傾聴能力が事業成長をどう支えるかを理論化する。
2026.04.29 約3分で読めます
前提
スタートアップの成功は、顧客、投資家、従業員といったステークホルダーの支援にかかっている
関係者から貴重な情報や資源を引き出すには、一方的に語るだけでなく、双方向のコミュニケーションを行う「聞く力」も重要
この研究では、「聞く力」を2つの側面に分解
🧠 認知的プロセス:
相手の言葉に注意を払い、その意味を解釈する
🙋 行動的プロセス:
質問やあいづちを通じ、「聞いていますよ」とシグナルを送り、相手がより話しやすい雰囲気を作る
-> この論文では、ベンチャー成長のリスニングモデルを提示
主張1:起業家個人の「聞く力」の限界
起業家個人の高いリスニング能力は、経験者からのアドバイスや顧客の意向を理解し、自社の能力(capabilities)を構築・実行する上で重要
そして、事業が成長し、ステークホルダーが増えると、より多くの声に耳を傾ける必要に迫られる
-> しかし、そもそも「聞く」という行為自体が認知資源(時間や集中力)を消耗させるため、起業家個人の聞く力は、やがて限界に達する
主張2:個人の能力から「組織の能力」へ
限界を乗り越えるには、起業家個人の「聞く能力(ability)」を、組織全体の「聞く仕組み(capability)」へと昇華させる
優れた起業家は、自分の聞き方を形式知化し、組織の文化やルーティンに落とし込む
主張3:「聞く仕組み」の作り方
著者によれば、組織の「アテンション構造」をデザインすることが重要
ポイント3つ:
✅ ルール:
「顧客からのフィードバックを毎週レビューする」といったルールを作る
✅ 役割:
特定のステークホルダーの声について、専門的に聞く担当者を置く
✅ 資源:
「聞く」ための時間や予算を意図的に確保する
主張4:聞く仕組みが企業を強くする
この組織的な聞く仕組みは、組織論でいう「ダイナミック・ケイパビリティ(自己変革能力)」として機能する
-> 「聞く仕組み」を通じて得られた質の高い情報に基づいて、企業は環境変化に対応し、自社の他の能力(製品開発力、マーケティング力など)を柔軟に変化できるから
まとめ:「聞く力」を核とした成長モデル
この論文が提唱する「ベンチャー成長のリスニングモデル」は以下の通り
1️⃣ 起業家が個人の聞く力で成長を牽引
2️⃣ しかし、成長により個人の力は限界に
3️⃣ 組織的な「聞く仕組み」が外部情報を収集・解釈
4️⃣ その情報を基に、他の事業能力を適応・進化させる(動的ケイパビリティの発揮)
-> さらなる成長へ
まとめ
起業家の成功は、雄弁に語る能力だけでなく、深く耳を傾ける能力にかかっている
そして、持続的な成長のためには聞く力を個人のスキルに留めず、組織全体の「文化」や「仕組み」にまで高める必要がある
「聞く力」は、単なるコミュニケーション術ではなく、成果を出す上で重要な経営能力の一つである
論文はこちら👇
Shepherd, D. A., & Pollack, J. M. (2025). A listening model of venture growth: entrepreneurs' listening abilities and ventures' listening capabilities. Journal of Business Venturing, 40(1). doi:10.1016/j.jbusvent.2024.106451
