女性マネージャーによる女性起業家支援は、ジェンダーバイアスを乗り越える助けになるか
STEMも起業も男性が支配的な領域。女性インキュベーション・マネージャーによるジェンダーに配慮した支援が、女性STEM起業家をどう後押しするかを検証する。
2026.04.22 約3分で読めます
研究の前提
STEM分野も起業の世界も、伝統的に男性が支配的な領域
そのため、STEM分野の女性起業家は「二重の男性性(double masculinity)」がもたらす敵対的ともいえるカルチャーに直面
彼女たちを支援するビジネス・インキュベーション(BI)施設もまた、男性的な規範が強い
では、同じく女性であるBIマネージャーは、クライアントである女性起業家をどう支援するのか?
理論的レンズ:ナッジ理論
この研究ではナッジ理論を採用:
-> ナッジとは、選択肢を禁じることなく、人々が特定の行動をとるように「そっと後押しする」仕掛けのこと
ここでは、単なるアドバイスと違い、より意図的に行動を誘導する働きかけを指す
調査方法
研究チームは、英国の女性インキュベーション・マネージャーと、彼女たちが支援する女性STEM起業家へインタビュー
起業家が「投資を受けられる状態」になるようにマネージャーが導く過程で、どのようなナッジが使われているかを分析
発見:行われていたのは適応
女性マネージャーたちは、クライアントである女性起業家に対して、既存の男性的な規範に適応するようにナッジ
-> ジェンダー・バイアスに挑戦するのではなく、バイアスの中で生き残る術を教えていた
具体的な「ナッジ」の数々
ピッチの準備段階で、女性起業家は以下のような指導(ナッジ)を受けていた
✅️話し方:
「もっと大きく、ゆっくり、低い声で」
✅️立ち居振る舞い:
「自信があるフリをして(Fake it till you make it)」
✅️服装:
「女性的すぎる格好は避けるように」
-> これらは全て、投資家が持つ「有能な起業家」という男性的なイメージに、彼女たちを近づけるためのもの
なぜ女性マネージャーはそうするのか?
-> 善意と現実主義から
投資家の大半が男性であり、彼らが無意識に持つジェンダーバイアスについて女性マネージャーは熟知
だからこそ、クライアントが資金調達に成功する確率を最大化するために、最も現実的な「攻略法」として、男性的な規範への適合を促す
まとめ
女性起業家に対する女性マネージャーのアプローチ:
投資家に評価されるために、女性的な特徴を抑え、男性的な振る舞いを演じるようナッジ
資金調達のような短期的な成功を促すと同時に、長期的には男性優位な規範そのものを強化・再生産してしまう構造を示唆
論文はこちら👇
Treanor, L., & Marlow, S. (2024). A nudge in the right direction? Gender-informed support by female business-incubation managers for female STEM-entrepreneurs. Entrepreneurship & Regional Development, 37(1-2), 92-112. doi:10.1080/08985626.2024.2362838
