論文レビュー

スタートアップの急成長を支える創業者の役割進化とは

急成長(スケーリング)には内部組織の再編が不可欠で、創業者の役割進化が鍵となる。創業者がスケーリングに備えてどう役割を変えていくかを実証的に分析する。

2026.09.23 約3分で読めます

論文紹介Lancker et al. (2023) · Journal of Business Venturing 論文を読む →

1. 研究の前提

- スタートアップの急成長 (Scaling) には内部組織の再編が不可欠で、特に重要なのが創業者の役割進化
- AIスタートアップの成長過程を18ヶ月調査し、創業者の公式な役割と非公式な役割について2つのフェーズで分析

2. 創業者の公式な役割

フェーズ1️⃣:創業者主導フェーズ
創業者は自身の役割(例:日常業務)の一部を整理。専門スキルを持つ初期メンバー (joiners) 採用して委任、創業者の役割は減少する。しかし、初期メンバーが何らかのミスマッチで退職した場合、創業者の役割は増加する

フェーズ2️⃣:相互作用主導フェーズ
パターンA:初期メンバーが主体的に役割を創造し、より効率的な働き方や新しいアプローチを導入。創業者がそのアプローチを取り入れる。結果として、創業者の職務遂行効率が向上する(例:従業員発案の新しい営業手法を創業者が採用)

パターンB:特に従業員が創業者の役割や責任の一部を積極的に引き継ぎ、創業者に近い存在(代理創業者 - Surrogate Founder)へと成長。創業者の役割負担が大幅に軽減され、戦略立案などのより上位の役割に集中できるようになる。急成長を実現する上で重要。

3. 創業者の非公式な役割

フェーズ1:創業者主導フェーズ
創業者が企業の価値観を設定・伝達し、初期メンバーが「組織の一員である」意味を自ら解釈する(創業者の非公式な役割に大きな変化はない)

フェーズ2:相互作用主導フェーズ
初期メンバーが、企業の価値観に沿った自発的な活動(例:社内イベント企画、新メンバーの業務開始支援など)を通じて、企業文化の維持・発展に貢献する「ソーシャル・ビルダー」として役割を担う。

これにより、創業者は企業文化の核心や創業時の精神を守る「レガシー・ゲートキーパー」へと非公式な役割をシフトさせる。

4. 急成長を支える役割進化を成功させる条件

初期メンバーによる積極的な役割創造: Role Craftingが成功し、そこから創業者の役割進化につながるには、以下の2つが不可欠。

1. 心理的安全性:
初期メンバーが失敗を恐れず、安心して新しい提案や行動を起こせる職場環境

2. 価値観の一致:
初期メンバーによる役割創造が、企業の価値観や目標に合致するという創業者の肯定的な評価

5. まとめ

スタートアップ急成長を果たすには、創業者自身の主体的な行動だけでなく、初期メンバーとの相互作用、特に両者による役割創造がカギとなる。

Reference: Van Lancker, E., Knockaert, M., Collewaert, V., & Breugst, N. (2023). Preparing for scaling: A study on founder role evolution. Journal of Business Venturing, 38(4). doi:10.1016/j.jbusvent.2023.106315

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