女性メンターが女性起業家の売上・利益を3割以上押し上げる──途上国のガラスの天井を破る鍵
ウガンダの起業家930人へのRCT。女性メンターに指導された女性起業家は売上32%・利益31%増。男性メンターでは効果なし。同性メンターの支援的な対話が自己効力感を高めた。
2025.12.08 約4分で読めます
研究の背景と問い
開発途上国では、女性起業家が直面する障壁は大きい
-> 政府やNGOは多額の資金を投じて研修プログラムを提供しているが、その効果は男性起業家に比べて女性起業家では著しく低い、あるいは全く見られないことが多かった
本研究の問い
メンターと起業家の性別を一致させること(ジェンダーマッチング)は、女性起業家の成功を後押しするのか?
キーコンセプト解説:メンターのジェンダーマッチング
この研究の核心は「メンターのジェンダーマッチング」
これは、女性起業家には女性のメンターを、男性起業家には男性のメンターを割り当てるというシンプルな介入
特に、女性同士のメンタリングが、これまで見過ごされてきた成功要因となりうるかを検証
データと分析手法
ウガンダの起業家930人を対象に、ランダム化比較試験(RCT)を用いたフィールド実験を実施
参加者を以下5グループにランダムに割り付け:
(1)女性メンターが付く女性起業家
(2)男性メンターが付く女性起業家
(3)男性メンターが付く男性起業家
(4)女性メンターが付く男性起業家
(5)メンターが付かない対照群
-> 約2年後の事業成果を追跡
発見1:女性メンターの効果は絶大
女性メンターから指導を受けた女性起業家は、対照群に比べ、事業の売上が平均32%、利益が平均31%増加
この効果は、特に向上心の高い女性起業家において、さらに大きくなる傾向が見られた。
発見2:男性メンターでは効果なし
男性メンターから指導を受けた女性起業家の業績には、対照群と比較して有意な改善は見られなかった
この結果は、女性起業家にとっては、メンターがいれば誰でも良いというわけではないことを示唆
なお、男性起業家の場合、メンターの性別による事業成果への有意な差は見られなかった
しかし、メンターがいない対照群と比較すると、メンターから指導を受けた男性起業家の売上は有意に増加しており、メンタリング自体の効果は確認された
-> 各グループの結果を踏まえると、女性起業家にとってはメンターとの性別の一致が特に重要であることを示唆
メカニズムの解明:なぜ女性メンターは効果的なのか?
メンターが提出した面談記録の言語分析は、女性メンターと女性起業家のペアにおいて、よりポジティブなエンゲージメントがあったことを示唆
トピックとしては、男性メンターが「顧客の収益性」といった金銭的な話題に多くの時間を割いていたのに対し、女性メンターは起業家とのエンゲージメントそのものに関する話題により多くの時間を割いていた
さらに、単語レベルの分析では、女性メンターは個人的・社会的な関係性を示す言葉(例:人称代名詞、家族・友人)を多く使う一方、金銭に関する言葉の使用は少なかった
あわせて、女性メンターは男性メンターよりも自信やリーダーシップを示す言葉を使っており、信頼できるアドバイスとなっていたことを示唆
-> こうした質の高いメンタリングが、先行研究でも示唆されているように、女性起業家の「自分ならできる」という信念、すなわち自己効力感を高めたと推察される
そして、高まった自己効力感が、ビジネスを成長させるための具体的な行動変容を促す可能性
本研究ではその行動変容の一つとして、顧客との関係構築に着目
女性メンターの指導を受けた女性起業家は、顧客との関係性(顧客との近さ、取引回数など)を示す指標が、他のどのグループよりも大きく向上
-> 顧客関係の強化が、最終的な売上や利益の増加を部分的に説明することも示された
まとめ
途上国の女性起業家が直面する「ガラスの天井」を破る上で、メンターの性別が重要な鍵となることを示唆
女性メンターによる指導は、女性起業家の事業成果を劇的に向上
これは、同性のメンターがもたらす支援的かつ自信に満ちたコミュニケーションが、女性起業家の自己効力感を高め、彼女たちの力を最大限に引き出す可能性を示している
書誌情報:
Germann, F., Anderson, S. J., Chintagunta, P. K., & Vilcassim, N. (2024). Frontiers: Breaking the Glass Ceiling: Empowering Female Entrepreneurs Through Female Mentors. Marketing Science, 43(2), 244-253.
