論文レビュー

オンラインでのメンター探し──「きっかけ」は作れても「つながり」構築には壁

3,500人超の起業家へのフィールド実験。成功事例ビデオによる代理学習は最初のアプローチを促すが、継続的な関係構築にはツールを使いこなす力が必要。きっかけとエンゲージメントは別の課題。

2025.12.10 約3分で読めます

論文紹介Lall et al. (2023) · Small Bus Econ

背景と問い

メンターの重要性は誰もが知るが、その見つけ方は謎に包まれている。特にオンラインでは、どうやって見知らぬ専門家に助けを求めればいいのか?

本研究の問い:
デジタルプラットフォーム上で、どんな「きっかけ」があれば起業家はメンターに声をかけ、そして実際に「つながり」を築くことができるのか?

キーコンセプト解説:3つの心理学的アプローチ

社会認知理論を基に、起業家を後押しする3つの介入策を検証

1) 代理学習 (Vicarious Learning):
成功した先輩(ロールモデル)のビデオを見せ、代理学習を促進

2) 遂行的達成 (Enactive Mastery):
メンターへの連絡をチャットボットでシミュレーションさせ、本番への自信(自己効力感)を高める

3) 言語的説得 (Verbal Persuasion):
プラットフォーム活用のコツを伝え、説得する

データと分析手法

オンラインメンタリングプラットフォームと提携し、3,500人以上の新規登録起業家を対象としたフィールド実験を実施

参加者をランダムに4つのグループ(3つの介入+対照群)に分け、どの介入がメンターへのアプローチと関係構築に繋がるかを検証

発見1:ビデオによる代理学習の効果

本研究で検証した介入策のうち、起業家が最初の一歩を促す上で統計的に有意な効果が見られたのは、ビデオによる代理学習のみ

しかし、アプローチが実際の「繋がり(4回以上のやり取り)」に発展する確率は上がらなかった

-> 成功事例のビデオを見せられた起業家は、メンターにアプローチする確率が有意に上昇

特に女性起業家でその効果は顕著:論文では、ビデオに登場したメンターが女性であったことが、同性同士で親近感を抱きやすいという「ホモフィリー」の原則に基づき、女性起業家の行動を特に強く後押しした可能性を指摘

発見2:使われなければ意味がない

「②遂行的達成」と「③言語的説得」は、介入を提供されたグループ全体で見た場合、統計的に有意な効果は見られなかった

理由は、多くの起業家が提供されたチャットボットの機能を使わなかったから

ただし、実際にチャットボットを利用した起業家に限れば、関係構築の成功率は有意に高かった

まとめ

オンラインでのメンター探しにおいて、成功事例のビデオは最初のアプローチを促すのに有効

しかし、関係構築の成功は、提供されたツールを実際に「使いこなす」起業家に限られる

-> きっかけ作りと、その後のエンゲージメントは別の課題

論文では、起業家がプラットフォームに登録する際に簡単なトレーニングを義務付けることが、参入障壁をわずかに高めるリスクはあるものの、最終的にはより質の高いマッチングにつながる可能性があると示唆

ただしその導入にあたっては、伝統的に支援が届きにくいコミュニティの起業家を排除しないよう、慎重な設計が求められるとも述べている

書誌情報:
Lall, S. A., Chen, L. W., & Mason, D. P. (2023). Digital platforms and entrepreneurial support: a field experiment in online mentoring. Small Bus Econ, 1-24.

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