自社R&Dとスタートアップ投資(CVC)を組み合わせる「両利き経営」はイノベーションを加速するか
技術獲得の源泉である自社R&DとコーポレートVCを組み合わせる両利き戦略を検討。オープンイノベーションからの学習には限界があることを示す。
2026.04.20 約3分で読めます
前提
企業がイノベーションを生み出すための技術獲得には、主に2つの源泉がある:
1️⃣内部R&D (Internal Sourcing)
2️⃣外部スタートアップ投資/CVC (External Sourcing)
-> これら2つの源泉のバランスをどう取るか(Technology Sourcing Ambidexterity)が重要な経営課題
多くの企業が「両利き」を目指すが、その効果には未解明な点が多い
調査方法
イノベーションを主目的として、CVC活動を活発に行った上場163社の1998年〜2001年データを分析(企業例:Ford Motor Company, Johnson & Johnson, Microsoft, Procter & Gamble, Sonyなど)
「両利き度」と、その後の企業のイノベーション成果(特許出願数など)の関係を検証
発見1:「両利き」には限界がある
「両利き戦略」と「イノベーション成果」の関係は、逆U字カーブを描く
✅最初は、内部R&Dと外部CVCを組み合わせるほどイノベーションは促進されるが、
❌ある一定の閾値を超えると、両利き度を高めることはイノベーション阻害につながる
なぜ「両利き」が逆効果になるのか?
外部からの多様なアイデア(CVC投資先)が増えすぎると:
1️⃣社内の知識とかけ離れすぎて、理解・吸収できない
2️⃣実験や検証に膨大なリソースが必要になり、組織が対応しきれない。
3️⃣内部R&D部門とのリソースの奪い合いが激化し、組織が疲弊する
-> つまり、組織が消化できる以上の情報を無理に取り込もうとすると、学習不全に
発見2:学習の限界を緩和する要因
学習の限界を乗り越えるカギは、「組織スラック(Organizational Slack)」、すぐに使える「余剰資源(人・モノ・金・時間)」の存在
組織スラックの役割
✅余剰資源が豊富な企業では、両利き戦略のプラスの効果がより大きく、マイナスに転じる閾値も高い
❌余剰資源が乏しい企業では、両利き戦略のプラスの効果はほとんど見られず、むしろ早期にマイナスの影響が出始める
-> 余剰資源は、不確実性の高い外部アイデアを試す実験コストを吸収し、組織が新しい知識を学ぶための「時間的・精神的余裕」を生み出すバッファーとして機能
まとめ
オープンイノベーションにおける「両利き戦略」は、諸刃の剣
✅️単に内外の探索活動を増やせば良いというものではなく、組織の学習能力には限界がある
✅️限界点は組織スラック(余剰資源)量によって決まる
リーンな組織ほど、両利き戦略の恩恵を受けにくく、むしろ害になるリスクが高い
逆に、潤沢な余剰資源を持つ組織は、その資源を新たな実験や学習に投下できるため、両利き戦略の恩恵をより大きく享受できる可能性を示唆
論文はこちら👇
Anokhin, S. A., Hess, M., & Wincent, J. (2024). Technology sourcing ambidexterity in corporate venture capital: limitations of learning from open innovation. Small Business Economics, 64(1), 239-258. doi:10.1007/s11187-024-00900-8
