アドバイスが活きるプロセス、無意味になるプロセス
スタートアップ12社とアドバイザー34人を11ヶ月観察。表面的な対話はアドバイスを他人事にする。文脈共有と的を絞った助けの要請で「共創」し、翻訳・テストして初めて戦略に統合される。
2026.02.09 約3分で読めます
研究の背景
事業を成功に導くには、多様な戦略の選択肢をテストすることが重要
選択肢が生まれる源泉の一つとして、外部からのアドバイスがある
しかし、アドバイスがどのように行われ、どう戦略に結びつくのか、そのプロセスはこれまで不明確だった
-> 起業家育成プログラムに参加したスタートアップ12社とアドバイザー34人のインタラクションを11ヶ月にわたり観察
アドバイスが生まれる瞬間から、その後の戦略テストまでを追跡
発見1:アドバイスが無意味になるプロセス
うまくいかないパターンは、起業家がアドバイザーの質問に表面的に答え、アドバイスを丁重に受け取るだけに終始するケース
この場合、起業家が自社の戦略の背景や制約といった深い文脈を共有しないため、アドバイザーは表面的な情報に基づいて助言
その結果、後になって起業家が「このアドバイスは我々の文脈に合わない」と判断し、自社の戦略に対するアドバイスは有効に機能しない
表面的に丁寧なだけの対話は、アドバイスを「他人事」にしてしまう
発見2:アドバイスが活きるプロセス
成功パターンは、起業家がアドバイスを単に受け取るのではなく、自ら積極的に共創するプロセス
ここでの共創とは、起業家が次の2つの行動をとること
1. 文脈を説明:
アドバイザーの質問に対し、自社の戦略の背景や制約を詳しく説明し、議論の前提を共有
2. 助けを求める:
漠然とアドバイスを待つのではなく、自社が直面する最も重要な課題について的を絞って助言を求め、アドバイザーの思考を特定の論点に集中させる
-> 結果、企業に合った表層的でないアドバイスをアドバイザーが提供できる
発見3:翻訳とテストの重要性
ただし、共創されたアドバイスであっても、そのままでは使えない
成功した起業家は、アドバイスを自社の戦略に組み込むために翻訳
具体的には、以下の3つの行動:
1. アドバイザーとの再対話:
アドバイスの意図を深く理解するために、改めて対話の機会を持つ
2. 自社戦略の再評価:
アドバイスが、自社の戦略全体にどのような影響を与えるかを検討
3. 仮説への落とし込み:
アドバイスを、市場で検証可能な具体的な「問い」や「仮説」の形に変える
-> その仮説を市場でテストし、有効性を検証
発見4:視野を広げるアドバイスと進むべき道を絞り込むテスト
1. アドバイスの役割:
起業家の視野を広げ、これまで考えてもみなかった、新しい戦略の選択肢を提示
2. テストの役割:
提示された選択肢の中から、どれが本当に価値があるのかを検証し、絞り込む
この2つは、戦略形成において補完的な役割を果たす
補足:『共創』は後からでも学べる
調査対象の中には、当初はアドバイスを遠ざけるスタイルだったが、プログラム途中で対話の仕方を見直し、統合するプロセスへと移行した企業も2社存在
アドバイスを戦略に活かすための共創スキルが、意識することで学習・習得可能であることを示唆
まとめ
✅ アドバイスは、そのまま受け取るものではなく、起業家とアドバイザーが共創
✅ 共創されたアドバイスは、翻訳されテストされることで、初めて戦略に統合される
✅ アドバイスは、戦略の選択肢を広げ、テストは最適な選択肢を絞り込むという補完的な役割を持つ
✅ 優れた起業家は、受動的にアドバイスを聞くのではなく、能動的に対話を行う
書誌情報
Miller, A., O’Mahony, S., & Cohen, S. L. (2024). Opening the Aperture: Explaining the Complementary Roles of Advice and Testing When Forming Entrepreneurial Strategy. Organization Science.
