論文レビュー

ソーシャル・ベンチャーのジレンマ──利益と社会貢献を両立するサーバント・リーダーシップ

社会貢献と利益という二重の使命を追うソーシャル・ベンチャー。創業者のサーバント・リーダーシップがいかに事業成果と社会的成果の両立に寄与するかを実証的に検討する。

2026.02.18 約3分で読めます

論文紹介Kimakwa et al. (2023) · Journal of Business Ethics

研究の問い

社会貢献と経済的利益という「二重の使命」を追うソーシャル・ベンチャー、その成功の鍵はどこにあるのか?

本研究は、創業者のカリスマ性だけでなく、従業員を「支え、奉仕する」サーバント・リーダーシップこそが、この難題を解決する原動力になり得ると論じ、フレームワークを提案

キーコンセプト解説1:ソーシャル・ベンチャーの二重の使命

ソーシャル・ベンチャーとは、社会問題の解決という社会的価値の創出を第一の目的としながら、その活動を維持・拡大するために事業を通じて経済的価値を生み出すハイブリッド組織

キーコンセプト解説2:サーバント・リーダーシップ

サーバント・リーダーシップとは、支配や権威ではなく、「まず相手に奉仕し、その後相手を導く」という考え方に基づくリーダーシップ・スタイル

-> リーダーの関心は、組織の目標達成だけでなく、従業員一人ひとりの成長や幸福(ウェルビーイング)、そしてコミュニティへの貢献に向けられる

共感、傾聴、癒し、 stewardship(奉仕の精神)などがその特徴とされる

-> 一般的な変革型リーダーシップが「組織目標の達成」に主眼を置くのに対し、サーバント・リーダーシップは従業員やコミュニティといったより広いステークホルダーの幸福を第一に考える点に違いがある

この特性が、二重の使命を持つソーシャル・ベンチャーに特に適していると論文は指摘

提案モデル1:リーダーから従業員へ

サーバント・リーダーの行動は、従業員の心に以下の2つのポジティブな状態を生み出します:

仕事の意義(Work Meaningfulness): 自分の仕事が価値あり、重要で、目的があると従業員が感じること
ウェルビーイング(Well-being): 従業員が仕事を通じて幸福や満足感を得ている状態。

提案モデル2:従業員から組織の成果へ

サーバント・リーダーシップは、「仕事の意義」と「ウェルビーイング」を高めることを辻て、従業員のジョブ・エンゲージメントを引き出す

ジョブ・エンゲージメントとは、従業員が仕事に熱意を持ち、没頭し、精力的に取り組んでいる状態

提案されたモデル3:エンゲージメントが成果を生む

高まった従業員のジョブ・エンゲージメントが、ソーシャル・ベンチャーの「社会的・経済的パフォーマンス」を向上させる

従業員一人ひとりが、リーダーによって育まれた有意味感と幸福感を原動力に、自律的に二重の使命の達成に貢献するようになる、というメカニズム

具体例:インドのアラビンド眼科病院

論文ではこのモデルを説明する事例として、驚異的な社会的・経済的パフォーマンスを両立させているインドのアラビンド眼科病院が挙げられている

創業者である医師は、貧しい人々にも質の高い眼科医療を提供するという使命を実現するため、従業員の成長を支援し、彼らが使命感を持って働ける環境を整えることを重視した

-> 十分なスキルを持たない人材でも、事業の社会的使命に共感する人を積極的に採用・育成

まとめ

ソーシャル・ベンチャーが「社会貢献」と「利益」という二重の使命を達成する鍵は、サーバント・リーダーシップにある

このリーダーシップは、従業員が感じる「仕事の意義」と「ウェルビーイング」を高め、それが「ジョブ・エンゲージメント」を促進し、最終的に組織全体のパフォーマンスを向上させる

-> 社会を変える事業の真のエンジンは、従業員の心の中にある

書誌情報

Kimakwa, S., Gonzalez, J. A., & Kaynak, H. (2023). Social Entrepreneur Servant Leadership and Social Venture Performance: How are They Related?. Journal of Business Ethics, 182, 95–118.

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