「時間がないと言っている人たちは、単に時間をムダに使っているだけだ」そう語るのは今から2,000年以上前の紀元前4年に、ローマで生まれた哲学者セネカ。 「いつも忙しくて、時間がない!」なんて人におすすめの一冊です。 彼が残した著書『生の短さについて』は、いわゆる古典にあたります。すらすらと読めたらいいのですが、そうもいきません。日本語で書かれた翻訳本ではありますが、日常会話ではまず出ない表現や漢字もあって読みにくい箇所があります。 でも、彼の言葉に触れると自分の生き方がぼんやりながら見えてきます。 例えば、こんな形で自分に問いかけ始めるかもしれません。
「忙しさを理由にして、なんとなく毎日を過ごしているかもしれない・・・」 「実は周囲に流されて生きているだけなのか??」本の切り口は「時間」ですが、メインは生き方・人生の本。 同時収録の『幸福な生について』にも示唆に富む言葉がちりばめられています。 サッと読む本ではなく、ちょっと時間のある時にゆっくり読みたい本ですね。
◆目次◆
生の短さについて 心の平静について 幸福な生について『生の短さについて』
「われわれの享(う)ける生が短いのではなく、われわれ自身が生を短くするのであり、われわれは生に欠乏しているのではなく、生を蕩尽(とうじん)する、それが真相なのだ」(p.12)
「記憶をたどり、思い出してみられるとよい、 いつあなたがしっかりした計画をもったことがあったか、 一日があなたの意図したとおりに進捗(しんちょく)した日が何日あったか、 いつあなたがあなた自身を自由に使うことができたか、 いつあなたの顔つきがふだんどおりの落ち着きを保っていたか、 いつあなたの心に怯えがなかったか、 これほど長い生涯にあなたがなした働きとは何であったか、 あなたが何を失っているか気づかない間に、 どれほど多くの人間があなたの生を奪い取っていったか、 あなたの生のどれほど多くの時間を詮(せん)ない悲しみや愚かな喜び、 貪欲な欲望や人との媚びへつらいの交わりが奪い去ったか、 あなたがその生の中からどれほどわずかな時間しか自分のために残しておかなかったか」(p.17)
『幸福な生について』
「幸福な生を送りたいというのは人間誰しもが抱く願望だが、幸福な生をもたらしてくれるものが何かを見極めることとなると、皆、暗中模索というのが実情だ」(p.133)
「われわれは、まず自分の求めるものが何かを措定しなければならない。次には、周囲をよく見渡し、どの道をたどれば目的に最も早く到達できるかを見て取らねばならない」(p.133)
「多数の者が同意して受け入れたものこそ最善のものと考えて、事をなすに世評に頼ること(中略)、理性を判断基準にするのではなく、人と同じであることを旨として生きることほど、大きな害悪の渦中にわれわれを巻き込むものはないのである」(p.134)