エンジェル投資は「顔」で決まる?──第一印象の影響
起業家の顔がもたらす第一印象が、エンジェル投資の判断にどう影響するかを分析。見た目に基づく評価が投資意思決定に与えるバイアスを明らかにする。
2026.08.03 約3分で読めます
エンジェル投資は「顔」で決まる?Huang et al. (2023)
(昨日のセッションで「起業家の見た目」に関してコメントがいくつかあったので関連して)
前提
(プレ)シード・ステージなど情報が少ない初期段階の投資では、投資家は「人」に賭けると言われることがある
この研究は、起業家の「顔の印象」が投資判断やその後の事業成果とどう関連するかを検証
分析方法:
米国の投資番組「Shark Tank」のピッチ379件とピッチコンテスト「Startup Battlefield」352件のデータを使い、1,437名が起業家の印象を評価、以下の概要で分析
経営能力の中身:優秀さ、自信、信頼性、ストレス耐性
人としての魅力の中身:好感度、身体的魅力
🔹軸①「総合能力」:
「経営能力」と「人としての魅力」の両方が高い、万能型の印象になるケース
🔹軸②「経営能力 vs 人としての魅力」:
片方が高いく、他方は低いと見なされるケース
(例:仕事人だが親しみやすさがない vs 愛されキャラだが能力は不明)
📝発見1: 投資家の意思決定において、第一印象は重要
投資オファー獲得やコンテスト勝利の確率が有意に高いのは、「総合能力が高い」もしくは「経営能力よりも魅力が高い」と評価された起業家
-> 投資家は、「経営能力」と「魅力」のどちらかを選ぶなら、後者の魅力を重視して投資判断を下す傾向
📝発見2: 合理的な判断と非合理的な判断
その後の起業家の事業成果と紐づけると、
🔹投資家が「総合能力が高い」と判断した起業家の事業は、実際にその後でも成功しやすい(合理的投資)
🔹 一方、「経営能力は不明だが魅力が高い」と投資家が評価した起業家の事業は、実際のところ成功しにくい(非合理的投資)
-> 事業成果に繋がる「総合的能力」を正しく評価すると同時に、事業成果がマイナスになる「能力が不明だが魅力は高い起業家」にも投資をしている
📝発見3: 投資経験はバイアスを軽減
投資家の経験(過去のピッチ審査回数)を分析したところ、経験豊富な投資家ほど、「人としての魅力」に惑わされにくくなる傾向が見らた
-> 学習効果が働き、事業成果に必要な指標のみで判断できるようになってくる可能性
まとめと示唆
エンジェル投資家の意思決定において、顔の印象は重要な役割を果たす
-> 合理的に起業家の能力を見抜く力がある一方、人としての魅力に惹かれる非合理的な側面を持っている
非合理的な判断の度合いは投資経験によって変化し、経験が少ない投資家ほど、顔の印象が与える「人としての魅力」に引っ張られた投資判断をする可能性
Reference: Huang, X., Ivković, Z., Jiang, J. X., & Wang, I. Y. (2023). Angel investment and first impressions. Journal of Financial Economics, 149(2), 161-178. doi:10.1016/j.jfineco.2023.05.001
