メンターが抱く「嫉妬」の二面性──デキるメンティーは煙たがられるのか
主体的なメンティーはメンターの自己価値を脅かす。メンティーの「善意」が高いと良性の嫉妬で知識共有が進み、低いと悪性の嫉妬で知識隠蔽が起こる。中国187組と米国実験で実証。
2025.12.01 約3分で読めます
はじめに:この研究の面白さ
これまでの研究では、メンターからの支援を引き出す上で、メンタリングを受けるメンティー側の主体性はポジティブな要因とされてきた。
しかし、主体的なメンティーは、メンター自身の自己価値を脅かす存在にもなりうる。
例:「自分はメンティーから必要とされていないのでは?」
本研究の問い:
メンティーの主体性が、どのような条件下でメンターの知識「共有」を促したり、知識の「隠蔽」を引き起こしたりするのか?
-> 中国のメンター・メンティーペア187組への調査と、米国での404人を対象としたシナリオ実験を実施
キーコンセプト解説1:2種類の「嫉妬」
この論文の鍵は、嫉妬を2種類に分けて捉える点にある。
(1) 良性の嫉妬 (Benign Envy):
相手を「すごい」と感じ、自分もそうなりたいと向上心が刺激されるポジティブな感情。
(2) 悪性の嫉妬 (Malicious Envy):
相手を引きずり下ろしたいと感じる、ネガティブで破壊的な感情。
キーコンセプト解説2:メンティーの「善意」
メンターがどちらの嫉妬を感じるかを分ける鍵は、メンティーの「善意(Benevolence)」、つまり「他者の幸福や利益を気遣う姿勢」をメンターがどう認識しているかにある。
発見:善意が感じられるかによって反応は変わる
主体的なメンティーに対するメンターの反応は、そのメンティーが善意的であると認識されるかどうかによって大きく異なることがわかった。
より具体的には、以下の異なる反応となった。
(1) 主体性が高く、かつ善意も高いと認識されるメンティーに対しては、メンターは「良性の嫉妬」を感じ、積極的に知識を共有
(2) 主体性が高いが、善意は低いと認識されるメンティーに対して、メンターは「悪性の嫉妬」を感じ、知識を隠そうとする。
メカニズムの解明:なぜそうなるのか?
主体的なメンティーは、メンターの支援を必要としないほど有能であるかのように映るため、メンターの自己価値を脅かす可能性がある。
その時、メンティーが善意的であると認識されれば、他者を気遣う動機や善意をメンターが信頼する。
その結果、メンティーの有能さによって生じる脅威が和らぎ、自分も向上しようという良性の嫉妬を抱くようになる。
しかし、メンティーが自己中心的であると認識されれば、メンターは「自分は軽んじられ、メンターとしての価値がない」と感じる脅威が強まる。
その結果、メンティーに対する悪性の嫉妬を抱き、知識を隠すという防衛的な行動に出る。
この研究の意義と示唆
この研究は、メンターシップの成功が、メンティーの能力だけでなく、メンターがメンティーに対して認識する「善意」に大きく左右されることを示した。
主体的なメンティーは、自らの能力を発揮すると同時に、周囲への配慮や善意を示すことが極めて重要である。
一方、メンターや組織は、嫉妬という感情の存在を認識し、それが建設的な方向に向かうような関係性づくりを支援する必要がある。
書誌情報:
Liu, X., Derfler-Rozin, R., Mao, J. Y., Schaubroeck, J. M., & Zhou, Q. (2025). Unraveling Mentors’ Positive and Negative Reactions to Protégés’ Taking Charge. Journal of Management, 51(5), 1834–1867.
